キャブレターのオーバーホール方法
キャブレターを分解する際はダイヤフラム側→フロートチャンバーの順に取り外しましょう。
清掃時はキャブレタークリーナーを全ての穴に注いで20分放置した後パーツクリーナーで溶剤を落として下さい。
キャブレターは小さい汚れでもジェット類に詰まると機能しなくなるので取り付け時はジェット類の穴が開いているか天井に向けて覗いて確認してから取り付けましょう。
今回はキャブレターオーバーホール方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- オーバーホール時期: スロットルを開けるとストール(エンジン回転数が下がる)する場合、エンジンが掛からない場合(プラグを確認して燃料が付いていない)
- 時間: 約50分(キャブレター脱着含まず)
- 費用: 0円~約2,000円
- ガスケット:約2,000円
- ショップ工賃: 約4,200円(キャブレター脱着含まず)
- 難易度: ★★★★☆
作業手順
1.フロートチャンバーのガソリン排出
フロートチャンバーに付いているドレンネジを緩めてフロートチャンバーに溜まっているガソリンを容器に排出しましょう。
ガソリンを大体排出し終わったらドレンネジを締め付けましょう。
締め付けすぎには注意です。
2気筒以上あるキャブレターは同様に全気筒のフロートチャンバーのガソリンを排出しましょう。
2番、3番のフロートチャンバーにマイナスドライバーでアクセスできない場合は、TONEのビットラチェットセットやスタッビドライバーを使用すると良いでしょう。
2.ダイヤフラムの取り外し
これから分解していきますが、キャブレターの上側のダイヤフラムカバーから取り外していきます。
2サイクルエンジンの場合はキャブレターを車体から取り外す段階で外れるのでスキップして下さい。
ダイヤフラムカバーを指で押さえながら固定ネジを3~4箇所緩めましょう。
ダイヤフラムカバー下にはスプリングが入っているのでカバーとスプリングが飛び跳ねるので必ずダイヤフラムカバーを押さえながら固定ネジを緩めて下さい。
ダイヤフラムカバーをゆっくり持ち上げて取り外しましょう。
中からスプリングが出てくるので紛失しないように保管しましょう。
黒いゴムの部分がダイヤフラムです。
ダイヤフラムに穴が開くと機能しなくなり、パーツ代は1個5,000円近くと高価なので取り扱いには注意して下さい。
ダイヤフラム中央部の樹脂の部分をラジオペンチで挟んで引き上げます。
ダイヤフラムを掴んで持ち上げたり、ダイヤフラムをペンチで挟む等すると穴が開く可能性があるので注意しましょう。
先端にニードル(針)が装着されていますが、この部分がメインジェットの穴に入っておりスロットルを開けるとダイヤフラムと連動してニードルが上がりメインジェットが機能します。
2気筒以上のキャブレターがある場合は、同様にダイヤフラムを取り外しましょう。
取り外したダイヤフラムは軟らかい布地の上等に置いて保管しましょう。
ニードルは尖っているので誤って踏んだり手を置いて刺さないよう十分注意して下さい。
3.ジェット類の取り外し
キャブレターを裏返して、フロートチャンバー側を分解していきます。
今回ファンネルは取り外しません。アルミのファンネルはすぐ角が変形するので地面に当たらないようゴム板を挟んでおきます。
フロートチャンバーの固定ネジを緩めましょう。
現段階で取り外すと隣のキャブレターのフロートチャンバーの固定ネジが固着していると緩めた際にフロートに接触して不具合が発生する可能性があるので全て緩めてから固定ネジを取り外しましょう。
他のキャブレターのフロートチャンバーの固定ネジも緩めましょう。
フロートチャンバーの固定ネジを取り外した後、垂直に持ち上げて取り外しましょう。
こじって持ち上げるとフロートに当たり油面の高さが変わる場合があるので、必ず垂直に持ち上げましょう。
ガスケットを取り外しましょう。
再利用する場合は保管しておきましょう。
他のキャブレターのフロートチャンバーも同様に取り外しましょう。
他のフロートにドライバー等が接触しないよう注意して取り外しましょう。
フロートピンを引き抜きましょう。
ラジオペンチでフロートピンの端を軽くつまんで引き抜くか反対側を配線ドライバーの端等の細いモノで押して引き抜きましょう。
フロートピンが圧入されている場合は精密ドライバーのプラスをフロートピンに当てて、ハンマーで軽く叩いて押し出しましょう。
専用工具のピンドライバーも販売されています。
フロートを持ち上げて取り外しましょう。
フロートにはフロートバルブが取り付けられいるので、フロートバルブをスライドさせて分離しましょう。
紛失しないよう注意して下さい。
もし、キャブレター側にフロートバルブが残っている場合は手で持ち上げて取り外しましょう。
他のキャブレターも同様にフロートピン・フロート・フロートバルブを取り外しましょう。
メインジェットホルダーをモンキーレンチで押さえながらマイナスドライバーでメインジェットを取り外しましょう。
ホルダーを押さえないとメインジェットと供回りする場合があります。
メインジェットホルダーを緩めて取り外しましょう。
スロージェットを緩めて取り外しましょう。
メインジェット・スロージェットには番手が書かれているので番手をメモしておきましょう。
各キャブレターのジェットの番手が全て同じとは限らないので注意しましょう。
マイナスドライバーの先端にマジックで線を引きマーキングしましょう。
パイロットスクリューの脱着時に何回転締め付けたか戻したかを確認するために初めはマーキングしたほうが良いでしょう。
パイロットスクリューを外す前に締め付けて戻し量を確認します。
先ほどマイナスドライバーにマーキングしましたが、その位置から何回転回したかを数えます。
参考車両の場合は、2回と1/4回時計回りに回すと回らなくなったので、戻し量は2と1/4回転戻しになります。
純正の吸気・排気・エンジンの場合はサービスマニュアルに記載されている戻し量で問題ありません。
戻し量確認後、パイロットスクリューを緩めて取り外しましょう。
パイロットスクリュー内部にはスプリングが入っているので爪楊枝等の細いもので取り外しましょう。
ピックアップする専用工具もあります。
スプリングの下にはワッシャーも入っているので忘れずに取り外しましょう。
小さいパーツなので紛失しないよう注意して下さい。
画像は無いのですが、ワッシャーの下にOリングが入っている場合は取り外してください。
他のキャブレターも同様に、ジェット類を取り外しましょう。
4.清掃
取り外したジェット類をチャック付クリアパックに入れましょう。
キャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
キャブレタークリーナーの溶剤にジェット類が漬かるまで吹き付け、クリアパックの端に寄せて容器の中に置いておきましょう。
放置時間は、約20分です。
ヤマハのキャブレタークリーナーは、ワコーズやニューテックどのメーカーよりも強力で塗装面に付着すれば剥がれ、ジェット類を1日放置すれば真鍮がボロボロに剥げ落ちるので忘れて放置しないよう注意しましょう。
穴という穴にキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
まず、メインジェットの穴にキャブレタークリーナーのノズルを上からウエスで覆って吹き付けます。
ウエスで覆わないとキャブレタークリーナーが跳ね返って目に入ると危険なので必ずウエスで覆って吹き付けて下さい。
メインジェット穴・スロージェット穴・バイスターター穴・フロートバルブ穴・パイロットスクリュー穴には、忘れずにキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
フロートチャンバー内にもキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
その他キャブレターも同様にキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
エンジン側からスロットルバルブとキャブレター内部の側壁にキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
スロットルバルブにはブローバイによって汚れている場合があり、キャブレタークリーナーによって綺麗に除去できます。
特に上記画像のようにエンジン側から見た場合のスロットルバルブに付着している場合があります。
その他のキャブレターも同様にエンジン側からキャブレター内部の側壁とスロットルバルブにも同様にキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
エアクリーナー側のスロットルバルブとキャブレター内部の側壁にもキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
その他のキャブレターも同様にエアクリーナー側からキャブレター内部の側壁とスロットルバルブにも同様にキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
キャブレターを立てます。
ダイヤフラム側からキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
穴があれば全て吹き付けましょう。
その他のキャブレターも同様にダイヤフラム側からキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
ウエスにキャブレタークリーナーを吹き付けて、ニードルを拭きましょう。
ニードルに汚れが付着しているとガソリンの噴射量が変わる場合があります。
エアージェットにもキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
フロートにもキャブレタークリーナーを吹き付けましょう。
特にフロートバルブ取り付け部を入念に清掃しましょう。
20分経過した状態のジェット類です。汚れているのが確認できます。
容器に一旦取り出しましょう。
ワッシャーがクリアパック残り易いので、取り忘れが無いかよく確認しましょう。
キャブレタークリーナーの溶剤を排出しましょう。
パーツクリーナーを吹き付けてキャブレタークリーナーの溶剤を除去しましょう。
ジェット類をパーツクリーナーで清掃していきます。
ジェットの先端を指で押さえた後、パーツクリーナー先端のノズルをジェットに挿して吹き付けます。
すると、ジェットの穴からパーツクリーナーの溶剤が出てきます。
正常なら、全ての穴から溶剤が出てきます。
コツとして勢い良くパーツクリーナーを吹き付けましょう。
もしジェットの穴に詰まりが発生しているようなら、その穴からは溶剤が出てこないので爪楊枝等で穴の汚れを除去しましょう。
メインジェット・スロージェットも同様にパーツクリーナーを吹き付けて穴が貫通しているか確認しましょう。
目視でも確認しましょう。
その他のニードルバルブ等もパーツクリーナーでキャブレタークリーナーの溶剤を落としましょう。
ニードルの頭をマイナスドライバーで押してみて、戻るか確認しましょう。
ニードルの頭はスプリングによって押すと戻るのですが、錆や腐食したガソリンで固着していると画像のように押しても戻らないか、戻り難い状態になっています。
戻らない、戻り難い場合はニードルバルブを交換しましょう。
ニードルバルブ先端のゴムに段付きが無いか確認しましょう。
先端のゴムに段が付いていると燃料が外部へ漏れる(オーバーフロー)原因になるので段付きがある場合は交換しましょう。
フロートピンに段月が無いか指で触って確認しましょう。
スムーズにフロートが動作せずオーバーフローの原因になるので段付きがある場合は交換しましょう。
バルブシートに汚れが付着していないか確認しましょう。
ガソリンが腐食してそのまま固着するとキャブレタークリーナーでも除去出来ない場合があり、汚れによりフロートバルブの動作が渋くなりオーバーフロー、もしくは反対に燃料供給が出来ず不調になる場合があります。
バルブシートが汚れている場合は、爪楊枝等で擦って除去しましょう。
もし除去できないようならバルブシートを交換するか、バルブシートを清掃する専用工具(興和精機より販売)を使用すると良いでしょう。
ダイヤフラムに破れやひび割れが無いか確認しましょう。
ダイヤフラムにはゴムを保護するケミカル(KURE ラバープロテクタント)を吹いておくと良いでしょう。
穴という穴にパーツクリーナーを吹きましょう。
コツとして勢い良く吹き付けましょう。
フロートにパーツクリーナーを吹いてキャブレタークリーナーの溶剤を落としましょう。
穴という穴をエアブローしましょう。
5.ジェット類の取り付け
ジェットホルダーをモンキーレンチで締め付けましょう。
締め付けすぎると容易に破損するので締め付け過ぎには注意しましょう。
マイナスドライバーの先端を綺麗なウエスで清掃しましょう。
メインジェット・スロージェットを締め付けましょう。
締め付けすぎると容易にネジ頭がナメるので締め付け過ぎには注意しましょう。
パイロットスクリューにスプリングを取り付けましょう。
パイロットスクリューにワッシャーを取り付けましょう。
パイロットスクリュージェットにOリングを取り付けましょう。
パイロットスクリューを軽く突き当たるまで締め付けましょう。
締め付け過ぎるとパイロットスクリューの先端が変形する可能性があるので軽く当たった程度で締め付けは終了です。
規定の回数戻しましょう。
参考車両の場合は1と3/4回転戻します。
フロートにフロートバルブを取り付けて、手で保持しましょう。
フロートにフロートピンを挿入しましょう。
他のキャブレターも同様にジェット類・フロートを取り付けましょう。
フロートチャンバーをドレンネジの向きを確認して取り付けましょう。
ドレンネジの向きは上記画像の通りです。
車体にキャブレターを取り付けた状態で長期保管する際にフロートチャンバーに溜まったガソリンをドレンネジを緩めて排出するのが望ましいのですが、ドレンネジの向きを2番3番逆に取り付けたらドライバーでドレンネジを緩めるのは困難なので、フロートチャンバーの向きを確認して取り付けましょう。
フロートチャンバーにガスケット(この場合、Oリング)を取り付けましょう。
Oリングを再利用する場合、上記画像のように燃料によって縮んでフロートチャンバーの溝に合わない場合があります。
Oリングが縮んだら、縮れない程度に手で伸ばして取り付けるとフロートチャンバーの溝に取り付けましょう。
フロートチャンバーをキャブレターに取り付けましょう。
フロートチャンバーがキャブレターに密着しているか確認した後、固定ネジを締め付けましょう。
フロートチャンバーをキャブレターに押さえつけながら固定ネジを締め付けましょう。
6.ダイヤフラムの取り付け
ダイヤフラムをキャブレターに配置しましょう。
ダイヤフラム上部を指で押して突き当たるまで下げましょう。
ダイヤフラムの縁がキャブレターの溝に収まっているか確認しましょう。溝からはみ出ている状態でダイヤフラムカバーを組み付けると破れて機能しなくなる可能性があるので注意して下さい。
他のダイヤフラムも同様に取り付けましょう。
ダイヤフラムカバーにスプリングをセットした後、手で保持しましょう。
ダイヤフラムカバーをダイヤフラムの突起に合わせた後、被せましょう。
この時、ダイヤフラムカバーがキャブレターに密着しているか確認して下さい。密着していないとダイヤフラムがキャブレターの溝に合っていない状態なので再度ダイヤフラムを配置し直しましょう。
ダイヤフラムカバーを押さえつけながら固定ネジを均等に締め付けましょう。
一か所のみを締め付けるとダイヤフラムカバーが斜めに傾く場合があるので均等に締め付けましょう。
他のキャブレターも同様に均等に締め付けましょう。
まとめ
- キャブレター分解前、ドレンネジを緩めてガソリンを排出する。
- キャブレター分解手順は、ダイヤフラム側→フロートチャンバー側に行う。
- フロートチャンバー取り外し時とフロートに触る際、フロートに力を加えて油面が変化しないよう注意する。
- パイロットスクリュー取り外し時、パイロットスクリュー・スプリング・ワッシャー・Oリングこれら4点全て取り外す。
- キャブレター清掃時、キャブレタークリーナーでキャブレターの全ての穴に噴射して約20分放置する。ジェット類はチャック付クリアパックに入れて約20分漬け置きする。20分後、パーツクリーナーでキャブレタークリーナーの成分を除去する為に強く吹き付ける。
- ジェット類の取り付け時、素材上締め付け過ぎはナメたり破損する可能性が高いので締め付け過ぎないよう注意する。
- ダイヤフラム取り付け時、ダイヤフラムに穴が開かないよう慎重に取り付ける。
Q&A
- CBX750ですが、20年近く眠っておりキャブのダイヤフラムのピストンが上がらない状態です。
- ピストンが固着している状態ですね、大きいマイナスドライバーの先端をウエスで覆ってエアクリーナー側から入れててこの原理でゆっくりと上げると固着が取れます。尚、参考車両のキャブのようにエアファンネルが取り付けられている場合はエアファンネルを支点にすると破損する可能性があるので取り外してから作業して下さい。力技になります。
- スロージェットが外れません。
- 浸透潤滑剤を塗布後、マイナスドライバーをジェットに垂直に立っている事を確認しつつゆっくりと反時計回りに回して下さい。
- パイロットスクリューって戻し量で判断するのは何故ですか?
- 逆に締め付け量で判断すると曖昧になりがちになり、戻し量の方が正確です。あと、パイロットスクリューにはスプリングが取り付けられており、スプリングを締め付けて調整するとスプリングの反発の力で若干戻る場合があるので戻しで調整するのがセオリーです。因みにキャブレターの同調調整時のアジャスターを調整する際も同様に戻しで調整します。
- パイロットスクリューの調整はどうやるのでしょう?
- 同町調整をした後に、パイロットスクリューの規定戻し量の周辺で調整して一番回転数が高くなるように設定します。タコメーターでは各キャブレターの正確な情報はつかめないのでバキュームゲージで確認して下さい。
- キャブレターオーバーホールの目的って、何なのでしょう?何でオーバーホールするのですか?
- キャブレターをオーバーホールする目的は、キャブレターを正常に機能させるために行います。具体的には長期間放置する事によるジェット類の穴が詰まりを解消させるのと、ダイヤフラムの固着を解消するのとダイヤフラムが破れている場合があるので交換する事が主な目的です。
- オーバーホールしたけど、直ぐまた詰まった。
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