バイクのフロントブレーキフルード交換・エア抜き方法
ブレーキフルードの交換は、原付バイクをはじめ排気量250cc未満の車両は車検が無い為義務づけられておらず極度に劣化した車両も見受けられます。
ブレーキフルードを交換せず乗っていると沸点が低くなりエアが噛んでブレーキが制動しなくなり事故になりかねません。
劣化しているほど、ブレーキレバーの手ごたえは軟らかく(スポンジー)になります。
交換後には、固いフィーリングに変わりライディングが一層楽しくなります。
2年に1度は排気量問わず交換しましょう。
今回はブレーキフルード交換方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 交換時期: 2年に1度
- 時間: 約15分(1キャリパー)
- 費用: 約2,200円(※約10,600円)
- ショップ工賃: 約1,300円(1キャリパー)
- 難易度: ★★★☆☆
※価格は希望小売価格です。通常値引きを行って販売しております。
※OPEN価格の()内はALLメンテナンスで販売目安価格です。
※「※」が付いた道具・工具は、必要に応じて使用します。
注意事項
- ブレーキフルードは、DOT4指定車種と、DOT3またはDOT4いずれかを使用する車種があります。DOT4の車種にDOT3のブレーキフルードは使用しないで下さい。
- 化学変化を防止する為、銘柄の異なるブレーキフルードを使用しないで下さい。
- ブレーキフルードは、塗装・プラスチック・ゴムを痛めるので周辺のパーツに付着しないようウエス等で覆って作業して下さい。付着した場合は、水等を使用し速やかに除去して下さい。
- ブレーキフルード交換は、リザーバータンクが可能な限り水平な状態になるよう、ハンドルの向きやサイドスタンド・センタースタンドの使用を行い調整して下さい。
作業手順
1.車体を水平にする
ブレーキフルードの液面を水平にする為に車体を水平にします。
メンテナンススタンドを所有している場合
センタースタンドがある場合は、センタースタンドを使用しましょう。
メンテナンススタンドを使用する場合は車体が倒れないようにハンドルを左に切り輪ゴムをブレーキレバーに掛けてスタンドアップしましょう。
詳しくは、メンテナンススタンド使用方法をご覧下さい。
メンテナンススタンドを所有していない場合
リザーバータンクの液面が水平になる位置へハンドルを調整しましょう。
車種やブラケットの角度により、センタースタンドよりサイドスタンドを使用してハンドル角度を調整した方が液面が水平になる場合があります。
2.リザーバータンク内のブレーキフルードを取り除く
リザーバータンク周辺をウエスで覆いましょう。
ブレーキフルードがこぼれて塗装面に付着すると塗装が剥がれるので、ウエスで覆い塗装剥がれを予防します。
燃料タンク上部や、メーター類にもウエスを被せておきましょう。
ブレーキフルードキャップを取り外しましょう。
プラスねじで複数箇所固定されている場合、ナメやすいのでドライバーを強めに押付けながら(押し8割、回し2割)緩めましょう。
※ネジが緩まない場合は、樹脂製リザーバータンクならTONEのビットラチェットセットのビットを使用し、金属製リザーバータンクならショックドライバーを使用して外しましょう。詳細は、以下の「ネジが外れない場合」をご覧下さい。
ダイアフラムプレートとダイアフラムを取り外しましょう。
ブレーキリザーバータンクの仕組みとして、ブレーキパッドは摩耗するとブレーキフルードを多くキャリパーに送り込みます。
すると、リザーバータンク内が負圧になるのでタンクキャップ溝から空気をリザーバータンク内部に負圧状態を無くし大気圧状態を作ります。
詳細は、ブレーキリザーバータンクの役割と点検箇所をご覧下さい。
ブレーキフルードをスポイトで全て抜き取りましょう。
底が見えるまで抜き取って頂いて構いません。
スポイトは容量10mlの製品がお勧めです。
バイク整備において使い勝手がよいです。
リザーバータンク内に汚れがある場合は、ウエスを使用して拭き取りましょう。
車検がない250cc未満の車両にブレーキフルードが固形化した汚れがある場合が多いです。
ブレーキフルードを長期に渡り交換しない為に発生します。そのような車両は、キャリパーも固着気味の場合が多いので、可能ならブレーキラインを一度オーバーホールするとより安心してブレーキ性能の向上(本来の性能)が期待できます。
ネジが外れない場合
プラスネジにも形状が複数あるので、ネジが外しにくい場合はTONEのビットラチェットセットの最適なビットを使用し外すと良いでしょう。画像のような樹脂系リザーバータンクは経験上ビットラチェットセットで全て外れます。
また、稀に転倒した車両でネジ頭に泥が付着している場合があります。そのような際は、精密マイナスドライバー等の先の細いものを使用し、泥を除去してから外しましょう。
ショックドライバーの使用できるリザーバータンク
樹脂系リザーバータンクにショックドライバーを使用すると、リザーバータンクが破損する可能性がある為、使用は控えましょう。
金属製リザーバータンクでしたら使用可能ですが、過度に強く叩かないよう注意して下さい。もしくは、威力の弱いミニショックドライバーの使用も検討してみてはいかがでしょう。
ブレーキフルードが塗装面に付着した場合
濡れたウエスで拭き取るか、水とブラシを使用して洗い流しましょう。
ブレーキフルードは水を吸収する性質があるので水で除去できます。
3.ブリーダーにメガネレンチ・ホースをセット
リザーバータンクに新しいブレーキフルードを注ぎましょう。ブレーキフルードはホンダBF(DOT4)がコストパフォーマンスが良くお勧めです。
新しいブレーキフルードで古いブレーキフルードを押し出す形でブレーキフルードの交換を行っていきます。
まず、ダイヤフラムを被せましょう。
車種によりブレーキレバーを握るとリザーバータンクからフルードが噴水のように飛び出す場合があります。
カウル等の塗装面に付着すると、剥がれる原因になるのでダイヤフラムを被せましょう。
ブレーキレバーを数回握りましょう。
これによりマスターシリンダーへつながる出入り口のエアを取ります。
ブリーダーキャップを取り外しましょう。
ブリーダーのゴムキャップ(ブリーダーキャップ)を取り外すとブリーダーが現れます。
ブリーダーから古いブレーキフルードを出していきます。
ブリーダーボルトを一旦緩めて固着を取り、軽く締め付けましょう。
先にメガネレンチを装着し、続いて透明ゴムホースを繋ぎます。
透明ゴムホースはネットショップよりホームセンターでの購入が安価に入手可能です。
ブレーキフルードが新品と入れ替わった事を判断するには、ブレーキフルードの色で確認します。ピンクの着色されたホースを使用すると、フルードが入れ替わったか色が分からない為、透明なゴムホースを使用しましょう。
ホースサイズはブリーダー先端外径より1mm小さい製品がお勧めです。
ブリーダー先端外径が6mmの場合、5mmのホースがお勧めとなります。通常は5mmのホースで対応します。小さいホースを使用するメリットは、ブレーキフルード交換中にホースとブリーダーの隙間からエアが入り、キャリパー内からエアが出てきている錯覚を防ぐことが出来ます。
ゴムホースの先にフルード受けを配置しましょう。
フルード受けは、ペットボトルで構いませんが、専用容器のほうが安定していますし、ホースが外れないのでおすすめです。
上記画像のフルード受けは、ワンマンブリーダーの容器を使用しています。
4.ブレーキフルード交換開始
ダブルディスクブレーキの場合、左側のキャリパーから先にフルード交換を行います。
ブレーキホースが長い順にフルード交換を行う為、左側のキャリパーから行う事になります。
4―1.ブレーキレバーを握る
左手でブレーキレバーを握った状態を保持します。
4―2.メガネレンチを半時計回りに回す
右手でメガネレンチを少しずつ緩めます。
するとブレーキレバーがグリップに近づいてきます。
この時、ブレーキレバーは握ったまま保持しましょう。ブレーキレバーは離さないで下さい。
※ブレーキフルード交換作業時、ブレーキレバーはゆっくり握りましょう。早く握ると微細なエア―が入り易くなります。
※ブリーダーは可能な限り緩めた状態でフルード交換を行いましょう。ブリーダーの開き量が少ない状態でフルード交換をすると、フルードに圧力が掛かりエアーが混入しやすくなる傾向にあります。
4―3.ブリーダーを閉める
ブレーキレバーがグリップに接触した段階でメガネレンチ時計回りに回して締めましょう。
※ブレーキフルードが入れ替わったことを確認し、作業を終了する際は、ブレーキレバーがグリップに当たる直前に締めて下さい。エアーがブリーダー側からエア混入を防ぎます。
4―4.ブレーキレバーを3回握る
ブリーダーを締めた状態でブレーキレバーを2~3回ほど握りましょう。
ブレーキレバーの感触が固くなるまでが目安です。
4―5.ブレーキフルードを適宜補充
フルードが排出されるにつれリザーバータンク内のフルードは少なくなり最終的にエアを吸ってしまいます。
LOWWERレベルを目安に適宜新品のブレーキフルードを補充しましょう。
ブレーキフルードが無くなりエアーを吸った場合の対処法
- リザーバータンクからエアーを吸った場合、リザーバータンクにブレーキフルードを補充した後、ブレーキレバーを何度か握り感触が出てくるか確認しましょう。
感触が無い場合は、マスターシリンダーにエアが噛んでいる為、マスターシリンダーのエア抜きをする必要があります。 - マスターシリンダーのバンジョーボルト周辺にウエスを敷きます。
- バンジョーボルトをメガネレンチで緩めた状態でブレーキレバーを握り、ブレーキフルードが出てくる事を確認します。
- 3を何回か行うと、ブレーキレバーの感触が戻るはずです。それでも直らない場合はキャリパーのエア抜きをしつこく行うとブレーキレバーの感触が戻りエアーが抜けます。
フロントフォークの油面調整する際の注射器をブリーダーにセットし、ブリーダーを緩めた状態で注射器を何回か引くと簡単にエア抜き出来ます。
4―6.プロセス4―1に戻り繰り返す
ブレーキフルード交換目安
ブレーキフルードの色が変わるまで交換しましょう。
ブレーキフルードの色は、劣化するにつれ茶色に近い色になります。
画像左:劣化したブレーキフルード。(黄色)
画像右:新品のブレーキフルード。(透明)
※着色されたブレーキフルードもあります。レーシングブレーキフルードは黄色いものもあり、残量が分かり易い緑色のブレーキフルードも市販されています。
一般的なフルードの色は、透明です。
4―7.ブリーダー内部のブレーキフルードを取り除く
ブリーダー内部に残ったブレーキフルードを紙ウエス等で吸い取りましょう。
エア抜き終了後ブリーダーの中には微量のブレーキフルードが残っており、放置すると錆の原因になります。
4―8.ブリーダーキャップを被せる
ブリーダーキャップを被せましょう。
キャップが無い場合、雨水が溜まり放置されると錆が発生する原因になるので新品のブリーダーキャップを取り付けましょう。
5.ブレーキフルードを補充する
ブレーキフルードをUPPERレベルまで補充しましょう。
LOWERレベルからUPPERレベルの中間位置ではなくUPPERレベルまで補充します。
走行中に車体を傾けた際にエアを吸わないようにする為です。
6.リザーバータンクキャップを取り付ける
ダイヤフラムに付着したフルードをウエスで拭き取った後、リザーバータンクに取り付けましょう。
ダイアフラムとリザーバータンクの接地面のフルードが残っていると、キャップを締め付けた際に滲んで塗装済みのリザーバータンクは剥げてしまいます。
破けている場合は、正常に機能しないので交換する必要があります。
ブレーキフルードをリザーブタンクに入れすぎると、溢れるのでウエスでリザーブタンクを巻き付けながらダイアフラム被せると良いでしょう。
ダイヤフラムプレートを取り付けます。
ダイアフラムプレート中心には穴が開いています。この穴がふさがっている場合は汚れを除去しましょう。
穴の役割は、フルードが少なくなる事でリザーバータンク内が負圧にならない為に大気圧状態を維持する為の空気を送る穴です。
リザーバータンクキャップを取り付けましょう。
キャップ内側にスリット(溝)が切り込んであります。
このスリットも内部が負圧にならない為に外から空気を送る通り道なので、切り込みに汚れが付着している場合は取り除きましょう。
負圧になると、ブレーキレバーが軟らかい印象になります。
リザーバータンクキャップボルトを取り付けましょう。
画像のような樹脂系リザーバータンクの場合、締め付けすぎるとが割れる場合があるので力の掛けすぎには注意しましょう。
取り外し時にナメたネジは使用せず新品ネジを購入しましょう。
金属のリザーバータンクの場合は、塗装剥げ防止のためにブレーキフルード交換が終わったら水の含んだウエスで拭いておくと安心です。
7.動作点検
ブレーキフルード交換後は、ブレーキレバーを握りしっかり手ごたえがあるか確認しましょう。全ての整備終了後、試走して各部動作点検を行いましょう。
ブレーキレバーが軟らかい場合はエアが噛んでいる可能性があるので再度エア抜きしましょう。エア抜きしてエアが透明ホースに出てこない場合は、問題ありません。
ブレーキの特性上で、柔らかい印象をうけたり、硬い印象をうけるものがあります。初期制動が高いタイプ(NISSINに多い)のものは感触がカチっと硬い印象を受けますが、握り量に比例して効くようなタイプ(住友電工に多い)は、握り分だけ制動するのでエアが噛んでいる印象を受けるかもしれません。エア混入の判断をするには、エア抜きを行うしかありません。
8.洗車
リザーバータンクとキャリパーを重点的に、洗車を行いましょう。ブレーキフルードが付着していると塗装剝げの原因になります。
キャリパーのブリーダーのねじ山からフルードが上がり、ホイールに付着して塗装剝げになる場合があります。フルード交換から10分後位にブリーダーを再度確認し、パーツクリーナーや水でフルードを除去しましょう。
まとめ
- ブレーキフルード交換前、車体を水平にする。
- ブレーキフルード交換手順は、ブレーキレバーを押す→ブリーダーを緩める→ブリーダーを締める→ブレーキレバーを離す→ブレーキレバーを2回ほど握る。
- ブレーキフルード交換時、ダブルディスクキャリパーの場合は左側(遠い側)のキャリパーから交換作業を行う。
- ブレーキフルード交換後、リザーバータンクにブレーキフルードをUPPERレベルまで補充する。
- ブレーキフルード交換終了後、ブリーダー内のフルードを除去する。
- エア抜きが失敗したら、再度エア抜きを繰り返す。
Q&A
- ブレーキレバーの感触が無く、一向にエア抜きが終わらないのですがどうすればよいでしょうか?
- エアが噛んでいるのでエア抜きをしましょう。注射器を使用し3回程引っ張ると直ぐにエア抜きは終わります。
もし、エア抜き専用工具を使用する場合、エアーコンプレッサーを使用して抜くタイプではなく、手元のレバーを握って抜く手動タイプエア抜き工具の方が抜き易いです。
ハンドルを外すなどして、リザーバータンクをひっくり返した状態にするとエアが混入する可能性が高まるので以降注意して下さい。
- エアが噛んでいるのでエア抜きをしましょう。注射器を使用し3回程引っ張ると直ぐにエア抜きは終わります。
- ブレーキレバーのブラケットの塗装がふやけているのですが、簡単な再塗装方法はありますか?
- ブレーキフルードが塗装面に付着してふやけてしまったと考えられます。簡単な塗装方法を以下に記載します。
- ブレーキホースが付いたままで良いのでブラケットを取り外して、真鍮ブラシでふやけた塗装を除去します。
- 耐水ペーパー600番程で磨い塗装面を平滑化します。
- ソフト99のタッチペン(ブラック)を使用すると先端がハケなので飛び散らず綺麗に塗装できます。
- ブレーキフルードが塗装面に付着してふやけてしまったと考えられます。簡単な塗装方法を以下に記載します。
- ブレーキフルードを2年毎に交換しているのですが、元から色が透明でブレーキフルードの色で判別出来ません。目安で良いのでどれ位の量を交換すればよいでしょう?
- 目安として1キャリパーにつき、リザーブタンク満タンで2~3回分と考えておきましょう。量は1キャリパー約150mlです。
- 2年前に購入したブレーキフルードが余っているのですが使用できるでしょうか。
- 変色していなければ再利用可能です。
DIYでブレーキフルード交換すると、購入したブレーキフルードを消費するのに何年も掛かかるかと思います。ブレーキフルードは水を吸う性質(吸湿性)があるので保管しておくだけで劣化していきます。なので次回から500ccほどのブレーキフルードを購入すると良いでしょう。保管時はキャップを固く締めて下さい。
- 変色していなければ再利用可能です。
お勧め
プラスチック製リザーバータンクの場合、保護目的でプラスチック光沢剤を使用すると光沢で見栄えが良くなり、保護にもなります。
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