バイクのフロントスプロケット交換方法
フロントスプロケットの取り外しと取り付け時は、クランクケースやその他エンジン内のパーツに支障をきたさないようインパクトは使用せずスピンナハンドルを使用しましょう。
取り外し後は汚れが溜まりやすいフロントスプロケットカバー・チェーンスライダー・ねじ山を清掃しましょう。
今回はフロントスプロケット交換方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 交換時期: 交換時期参照
- 時間: 約25分
- 費用: 約3,500円
- ショップ工賃: 約2,000円
- 難易度: ★★☆☆☆
※フロントスプロケットは、リンク先の検索窓で車種名を入力して適合する製品を選んでください。例:CBR400RR
交換時期
スプロケット先端の尖り具合で判断します。
上記画像は、10,000km走行後の摩耗したスプロケット(引用元記述)と新品スプロケットの比較画像です。
上に置かれているスプロケットが摩耗し交換時期を迎えたもの。進行方向に対してえぐられるように多く摩耗し谷部分の長さが長くなっているのがお分かりになると思います。
下に置かれているスプロケットは新品です。
上記画像ほどに尖っていれば交換時期は過ぎているので、ご自身のスプロケットと比較してみてください。
スプロケットが摩耗すると画像のように谷の長さが大きくなります。
谷の長さが大きくなるとチェーンとの噛み合わせが合わなくなりチェーンへ負荷が掛かるようになり、チェーンの寿命が早まります。
更にスプロケットの摩耗は勿論、チェーンも伸びるとホイールを一周する間にチェーンとスプロケットの噛み合わせが合わずスプロケットの山に乗り上げるようになることで走行中に振動が発生するようになります。
長さが大きくなります。
谷の長さが大きくなるとドライブチェーンとの噛み合わせが合わなくなり、ドライブチェーンへ負荷が掛かるようになります。
結果、ドライブチェーンの寿命が早まってしまいます。
作業手順
1.フロントスプロケット取り外し
スピードギアボックスが取り付けられている場合は、固定ボルトを取り外しましょう。
スピードギアボックスを取り外しましょう。
スピードギアボックスはフロントスプロケットのセンター固定ボルトに取り付けられているので引き抜く事で取り外すことができます。
チェンジペダルアームがスプロケットカバー取り外しに支障となる場合はチェンジペダルアームを取り外しましょう。
まずチェンジペダルアームと対象のシフトロッドにポンチマークがあることを確認しましょう。
ポンチマークが無い場合は油性ペンで印をつけておきましょう。
チェンジペダルアームの固定ボルトを取り外しましょう。
緩めるだけでは外れないので必ず取り外しましょう。
チェンジペダルアームを引き抜いて取り外しましょう。
フロントスプロケットカバーの固定ボルトを取り外しましょう。
スプロケットカバーを取り外しましょう。
スプロケットの固定ボルトを取り外していきましょう。
スプロケットの取り付けねじは主に3タイプあります。
- センターボルト
- センターナット
- 複数のボルト
センターボルト・センターナットの取り外しは、高トルクで締め付けられているので取り外しには大きな力を要します。
複数のボルトの取り外しは、1本に掛かるトルクは少ないので容易に取り外しが出来ます。
車体に跨りリアブレーキを踏みながら、スピンナハンドルを使用してフロントスプロケット固定ボルト(ナット)を反時計回りに緩めましょう。
リアブレーキを制動させる事でリアホイールを固定されてドライブチェーンを通してフロントスプロケットも固定されます。
L字型リアスタンドをはじめ、メンテナンススタンドによってはフックがスイングアームから外れて転倒する恐れがあるので車体には体重を掛けないように注意しましょう。
ドライブチェーンの遊びを作るためにチェンアジャスターをいっぱいまで緩めましょう。
スピンナハンドルを使用してアクスルナットを緩めましょう。
アクスルナットが指で動く程度まで緩めましょう。
フロントスプロケットの固定ボルト(ナット)を取り外しましょう。
ドライブチェーンごとフロントスプロケットを引き抜いて取り外しましょう。
手を挟まないよう十分注意して下さい。
ドライブチェーンからフロントスプロケットを取り外しましょう。
ドライブチェーンをたるませるとスプロケットが取り外し易いです。
2.清掃
ウエスとパーツクリーナーを使用してクランクケース側の汚れを除去しましょう。
飛散したオイルで小石などを巻き込んで汚れが溜まりやすい箇所なので、下に容器を配置して堆積した小石等を落とすと良いでしょう。
左:清掃前
右:清掃後
パーツクリーナーとウエスで清掃しましょう。
汚れが落ちない場合はキャブレタークリーナーを使用すると落とし易いです。
但し、変色の恐れがありますのでご理解の上行って下さい。
クランクケースと固定ボルトにタップ・ダイスを掛けましょう。
砂など汚れが入り込みやすい箇所なのでトルク値が大きくずれる可能性があるので忘れずに行いましょう。
詳しくは、タップ・ダイスの使い方をご覧ください。
3.フロントスプロケット取り付け
フロントスプロケットをドライブチェーンに取り付けた後、カウンターシャフトに取り付けましょう。
カウンターシャフト・スプロケットの溝を合わせて取り付けましょう。
取り付けのポイントは以下の通りです。
- ドライブチェーンをたるませ、スプロケットの動きに余裕を作る
- カウンターシャフトにスプロケットを水平に挿入する
フロントスプロケットの固定ボルトの雌ネジとボルトにタップ・ダイスを掛けましょう。
ネジロック剤が塗布されている場合があるので忘れずに行いましょう。
ドライブチェーンが拾った汚れがチェーンスライダーに付着して堆積しやすいのでチェーンスライダーを清掃していきましょう。
チェーンスライダーが取り付け状態での清掃は、汚れを完全に除去は難しいのでチェーンスライダーを取り外してから清掃しましょう。
作業の支障となるステップホルダーを取り外しましょう。
チェーンスライダーの固定ボルトを取り外しましょう。
チェーンスライダーを取り外しましょう。
パーツクリーナーとウエスでチェーンスライダーを清掃しましょう。
パーツクリーナーとウエスでドライブチェーンスライダー周辺を清掃しましょう。
走行距離47,000kmのチェーンスライダーです。
固定ボルト箇所は千切れて上下に分裂しています。
チェーンスライダーが固定できなくなりドライブチェーンの当たり位置がずれ偏摩耗しています。
チェーンスライダーは消耗品なので、摩耗や経年によるゴムの劣化が見られる場合は交換しましょう。
上記は交換です。
清掃・点検が完了したチェーンスライダーを取り付けましょう。
ステップホルダーを取り外した場合、指定トルクで締め付けましょう。
ドライブチェーンの張り・アライメント調整を行うために、ドライブチェーンアジャスターを調整しましょう。
左右の目盛りが同一になるように調整して下さい。
詳しくは、ドライブチェーン張り・アライメント調整方法をご覧ください。
アクスルナットを指定トルクで締め付けましょう。
アクスルシャフトをメガネレンチ等で保持して、アクスルナットをトルクレンチで指定トルクで締め付けましょう。
詳しくは、ドライブチェーン張り・アライメント調整方法をご覧ください。
リアブレーキを踏みながら、フロントスプロケット固定ボルトを指定トルクで締め付けましょう。
参考車両のようにセンターボルト、もしくはセンターナットの場合はサービスマニュアルに従って指定トルクで締め付けて頂いて問題ありません。
しかし、複数のボルトで取り付けられている場合はサービスマニュアルにネジロック剤塗布の記載が無くても、ネジロック剤を塗布する事をお勧めします。
トルクレンチは持ち手の中心線を垂直に力を掛けましょう。
詳しくは、トルクレンチの使い方をご覧下さい。
フロントスプロケットカバーを取り付けましょう。
固定ボルトを対角線上に2回程に分けて均等に締め付けましょう。
スピードメーターギアボックスを取り外した場合は取り付けましょう。
チェンジペダルアームとシフトロッドのポンチマークを合わせてチェンジペダルアームを取り付けましょう。
チェンジペダルアームの固定ボルトを締め付けましょう。
スプリングワッシャーが取り付けられている場合には標準トルクで締め付けるのではなく、適度に締め付けましょう。
まとめ
- チェンジペダルアームの取り外し時、固定ボルトを緩めるのではなく取り外す。
- フロントスプロケットの取り外し時、リアブレーキを踏みながら固定ボルト、ナットを取り外す。
- フロントスプロケット取り外し後、スプロケットとカバーの固定ボルトとナットにタップ、ダイスを掛ける。
- フロントスプロケット取り付け時、フロントスプロケットの固定ボルトが複数取り付けられている場合はネジロック剤を塗布する。
- フロントスプロケット取り付け時、リアブレーキを踏みながら固定ボルト、ナットを取り付ける。
Q&A
- センターナットボルトで固定されているのですが、ボルト頭がナメ掛かっていて外せるか不安なのでなにかアドバイスはありませんか?
- まず使用するソケットは6角を使用して下さい。ソケットには12角タイプと6角タイプの2タイプあるのですが、12角だとナメ易くなるので既にナメ掛かっている場合の使用は厳禁です。
加えて、使用するスピンナハンドルは長くて力が加えやすい1/2スピンナハンドルを使用しましょう。3/8ロングスピンナハンドルは安定性に欠けるので出来れば1/2スピンナハンドルが良いです。ソケットも1/2の製品がお勧めです。
上記の1/2の6角ソケットに1/2スピンナハンドルを使用してエクステンションバーは使用せずに緩めていきます。緩める際、ソケットが斜めになっていないか確認しながらゆっくり反時計回りに力を加えていきます。これでナメてしまうようなら仕方ないので、人気のナットツイスターを使ってみるか最終手段はエキストラクターでボルトを救出しましょう。
- まず使用するソケットは6角を使用して下さい。ソケットには12角タイプと6角タイプの2タイプあるのですが、12角だとナメ易くなるので既にナメ掛かっている場合の使用は厳禁です。
- アライメント調整をしてもチェーンのラインが曲がってしまうのですが何故でしょう。
- スプロケットが裏表逆に取り付けられている可能性があります。純正スプロケットであればサービスマニュアル、社外スプロケットであれば取扱説明書に従い取り付けを行いましょう。
- アライメント調整が出来ていない可能性があります。スイングアーム左右の目盛りが同一が確認しましょう。詳しくは、ドライブチェーン張り・アライメント調整方法をご覧ください。
- どうしてスプロケットとボルト間に遊びがあるのでしょう?
- 基本的に全てのパーツにこのような極僅かな遊び(クリアランス)があります。金属である以上熱すれば膨張しますしその遊びは必ず発生します。そこで、その遊びを考慮して組み付けていく場面があります。今回のスプロケットやブレーキディスク、リアサスペンションのピポットボルトもそうです。リアサスペンションのボルト類を緩めて再度締め付けると車高が1cm程下がる場合がありますがそれは遊びを詰めた結果です。
- お勧めのスプロケットメーカーはどこでしょう?
- AFAM(アファム)がお勧めです。精度・耐久性ともに世界基準のバイクスプロケットメーカーです。
適応メーカー:ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ・アプリリア・ドゥカティ・KTM・BMW・MV AGUSTAです。他のスプロケットメーカーでは適応メーカー内(HONDA)での適応車種(CBR400RR)が少ないのですがAFAMは比較的多いです。AFAM適応車種確認はこちら
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※AFAM以外のメーカーも検索結果に表示されます。
- AFAM(アファム)がお勧めです。精度・耐久性ともに世界基準のバイクスプロケットメーカーです。
- エアインパクトで緩めても良いでしょうか?
- エア・電動インパクトの使用は控えた方が良いでしょう。クランクケースやその他エンジン内のパーツへ支障をきたす可能性があります。
ホイール簡単用語解説
- ホイールカラー:ホイールとフロントフォーク・スイングアームの間に取り付け隙間を埋める役割
- アクスルシャフト:ホイールを保持する役割
- ダストシール:異物と雨水をホイール内部への侵入を防ぐ役割。雨水はグリスによって侵入を阻止している
- ハブダンパー:ホイールとドリブンフランジ間に配置されている動力の衝撃してホイールへ伝えるパーツ
- ドリブンフランジ:スプロケットとホイールを繋ぐパーツ
- スピードギアボックス:スピードメーターのスピードを計測するパーツ
- チェーンアジャスター:ドライブチェーンの張り調整を行う調整器
- チェーンスライダー:サスペンションが上下した際、フレームへの干渉を防ぐパーツ
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