バイクのイグニッションコイル交換方法

2020年7月17日メイン整備記事,電装系,難易度:★★★☆☆,費用:10000円以下

イグニッションコイルは電圧を12Vから30,000V以上まで昇圧させ、プラグからスパークさせる為の電気を作る点火系パーツです。
交換作業をした際にイグニッションコイルへ繋ぐ端子取り付けミスやプラグケーブルの気筒への取り付けミスによってエンジンが掛からない事があるので注意しましょう。(後述)

今回はイグニッションコイルの交換方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。

整備情報

  • 交換時期: 点検した結果イグニッションコイルが故障している場合、強化品へ変更したい場合
  • 時間: 約35分
  • 費用: 約5,000円~10,000円
    • イグニッションコイル(1個):約5,000円
  • ショップ工賃: 約3,000円
  • 難易度: ★★★☆☆

作業手順

1.イグニッションコイルの取り外し

燃料タンク 取り外し

燃料タンクを取り外しましょう。
燃料タンクは3タイプ程の脱着方法があります。
詳しくは、燃料タンクの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。

エアクリーナーボックス 取り付け1キャブレター 取り付け2

参考車両の場合は作業の支障となるエアクリーナーボックス・キャブレターを取り外します。
詳しくは、エアクリーナーボックス取り外し・取り付け方法キャブレターの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。

イグニッションコイル ステー 取り外しイグニッションコイルno取り外し

イグニッションコイルのステーを取り外しましょう。

イグニッションコイル プラグコード マーキング

イグニッションコイルとプラグケーブルにマーキングを記して関連性が分かるようにしておきましょう
左から1気筒、2気筒と数えて1気筒目のプラグケーブルとその先に繋がっているイグニッションコイルに"1″と記します。
2、3、4気筒目も同様にマーキングしましょう。

イグニッションコイル プラグコード 取り外しイグニッションコイル プラグコード 取り外し2イグニッションコイル プラグコード 取り外し4

イグニッションコイルのジョイント部分をウエスで覆いプライヤーで反時計回りに回して取り外しましょう。

イグニッションコイル プラグコード 取り外し5イグニッションコイル プラグコード 取り外し6イグニッションコイル プラグコード 取り外し7

ジョイントのナットを取り外した後、プラグコードを取り外しましょう。

イグニッションコイル プラグコード 分離後イグニッションコイル 配線の取り外しイグニッションコイル 配線の取り外し後

イグニッションコイルへ繋がっている配線の端子を取り外しましょう。

イグニッションコイル ステー 固定ボルト 取り外しイグニッションコイル ステー 固定ボルト 取り外し後

イグニッションコイルとステーの固定ボルトを取り外しましょう。

イグニッションコイル 端子 端子磨きイグニッションコイル 端子 磨くイグニッションコイル 端子 端子磨き後

イグニッションコイルを点検した結果再利用する場合、端子に錆が発生しているようなら紙やすり(800番)で磨いておきましょう。
上記画像の工具はピンセットに切り取った紙やすりを瞬間接着剤で取り付けて作った端子磨き用のお手製工具です。

イグニッションコイルステー タップイグニッションコイル ボルト ダイス

ボルトと雌ネジにタップ・ダイスを掛けてねじ山を清掃しましょう。
ねじ山には浸透潤滑剤を塗布してからタップ・ダイスを使いましょう。
詳しくは、タップ・ダイスの使い方をご覧下さい。

2.イグニッションコイルの取り付け

イグニッションコイル ステー 取り付け イグニッションコイル ステー 取り付け 4イグニッションコイル ステー 取り付け後

イグニッションコイルをステーに固定ボルトで取り付けましょう。
固定ボルトはトルクレンチで指定トルクで締め付けましょう。
詳しくは、トルクレンチの使い方をご覧下さい。

イグニッションコイル 端子 グリス塗布イグニッションコイル 端子 グリス塗布後2

イグニッションコイルの端子に接点グリスを薄く塗布しましょう。

プラグコード 脱脂プラグコード 脱脂2プラグコード 脱脂後

プラグケーブルをウエス+パーツクリーナーで脱脂しましょう。
これによりジョイント類がプラグケーブルと密着し、プラグケーブルとイグニッションコイルの接触がより密着・保持し易くなります。

プラグコード パーツ 取り付け2

ジョイント類とは画像のようなパーツを指します。
プラグケーブルをイグニッションコイルへ押し込んで保持するために重要なパーツです。

プラグコード ジョイント部分 確認プラグコード 接点グリス塗布2プラグコード 接点グリス塗布

プラグケーブルの銅線に接点グリスを塗布しておくと良いでしょう。
銅線は数えるほどしかケーブル内に入っていないのでイグニッションコイルの端子から最大限効率よくプラグまで送る為にグリス塗布を行います。

プラグコード 刻印プラグコード 刻印2

多気筒エンジンでプラグケーブルにマーキング印がある場合は長さや曲がりなど計算されて作られているので印に従いましょう
“ENG1″の記述は車体に跨り左から1番目の気筒のプラグケーブルを指します。

イグニッションコイル 端子 グリス塗布 プラグコード 脱脂後

イグニッションコイルへプラグケーブルを取り付けていきましょう。

イグニッションコイル プラグコード 取り付けイグニッションコイル プラグコード 押し込むイグニッションコイル プラグコード 取り付け2

プラグケーブルをイグニッションコイル中央の端子へ差し込んだ後、ジョイントを時計回りに回して締め付けましょう。
イグニッションコイルの中央の端子は針のように尖っているかと思うので、針にプラグケーブルの銅線部分が接触するように取り付けましょう。

プライヤー 可変イグニッションコイル ジョイント 締め付け.jpg

イグニッションコイルのジョイントにウエスを巻いてプライヤーで締め付けましょう。

ヒートガードヒートガード プラグケーブル 挿入ヒートガード プラグケーブル 挿入後

エンジンからの熱を遮断するヒートガードが取り付けられている場合は取り付けましょう。
参考車両の場合、ヒートガードにプラグケーブルを通す穴が設けられているのでプラグケーブルを通します。

イグニッションコイル 配線 取り付けイグニッションコイル 配線 取り付け後

イグニッションコイルの端子を取り付けましょう。
4気筒の場合はイグニッションコイルが2つ使用されており、配線も2組使用されています。
配線を逆に組んでしまうとプラグから点火するタイミングが狂ってしまいエンジンが始動できないので、指定のイグニッションコイルへ指定の配線を取り付けましょう。

プラグケーブル 取り付けプラグケーブル 取り付け2

プラグケーブルをマーキングした気筒のプラグに取り付けましょう。

イグニッションコイルの取り付けイグニッションコイルの取り付け2イグニッションコイルの取り付け3

イグニッションコイルのステー固定ボルトを取り付けましょう。

キャブレターの取り付け2エアクリーナーボックス 取り付け1燃料タンク 取り付け2

取り外したパーツを取り付けましょう。
詳しくは、燃料タンクの取り外し・取り付け方法エアクリーナーボックス取り外し・取り付け方法キャブレターの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。

イグニッションONキルスイッチ ON セルを回す

エンジンを始動して動作確認を行いましょう。

まとめ

  • イグニッションコイル取り外し前、イグニッションコイルとプラグケーブルに気筒番号をマーキングする。気筒の数え方は車体に跨った状態で左から1、2、3、4と数える。
  • イグニッションコイル取り付け時、プラグケーブルをウエスとパーツクリーナーで脱脂してからマーキング通りにイグニッションコイルに取り付ける
  • プラグケーブル取り付け時、マーキングされた気筒のプラグへプラグケーブルを取り付ける

Q&A

  • エンジンが始動せず、キャブレターの辺りからパンっと音がする状態なのですが何か取り付けミスをしてしまったのでしょうか?
    • そうですね、取り付けミスの可能性が高いです。点火時期が狂っている状態です。イグニッションコイルへ繋ぐ配線があると思うのですが、その配線の取り付けミスの可能性が高いです。アースは特に気にする必要は無いのですがプラスの配線が左右逆に取り付けられていると思うので、一度確認してみましょう。
  • マーキングしないで外してしまって、取り付けが分からずに困っています。適当につけちゃ動かないですよね?
    • サービスマニュアルに記載されていると思うので確認してみて下さい。パーツリストにも記載されているかと思います。
      適当につけても動かないと思います。4気筒の場合の多くが1と4番が同じイグニッションコイルで、3と2が同じイグニッションコイルです。
  • イグニッションコイルって、ただ電圧を上げているだけですか!?点火時期って何なんですか?仕組みを簡単に教えて下さい。
    • 簡単に仕組みを解説すると、おっしゃる通りイグニッションコイル自体の機能は電圧を12Vから3万ボルト位まで上げる役割を持っているだけです。点火時期はその前に取り付けられているイグナイターの役割です。点火時期とは、読んで字のごとく点火するタイミングの事です。吸気工程で燃料と空気をエンジンの中に吸い込みます。圧縮工程で吸気バルブが閉まってエンジン内が密閉状態になって燃料と空気を圧縮します。そこにイグニッションコイルで高電圧になって出来た火花を飛ばして瞬間的に火種を作るんです。よくスパークって表現しますが、実際は火種が発生してそこに着火します。そのスパークしてから火種を作るまでは一定の決まった時間掛かります。
      でも、エンジンって1000回転から10000回転とかまで吸気から圧縮するスピードって違いがありますよね?爆発させるタイミングって、一番圧縮が高い箇所で爆発させた方が一番パワーも出て綺麗に燃えてくれます。
      回転数が高くなるほど、点火するタイミングは早くしないと一番圧縮が高くなる位置で点火できませんよね。
      点火時期はこの回転数の違いによって点火するタイミングを早めたり遅めたりする事を言います。この役割はイグニッションコイルより前に取り付けられているイグナイター(スパークユニット)によって決められています。
      イグナイターは、クランクシャフトに取り付けられているフライホイールの通過するタイミングを拾っています。他にもキャブレターに取り付けられているスロットルセンサー等も点火時期の判断材料の1つです。
  • 1つのイグニッションコイルに対して1番と4番のプラグケーブルを逆に組んでも動きますか?
    • 同時点火している場合は動きます。
      点火するタイミングは各気筒毎に圧縮が終わるタイミングて点火するので"吸気→圧縮→爆発→排気“の工程の中で圧縮と排気の2回点火している事になります。気筒毎に点火する装置もありますが、コストが掛かるので1番と4番の圧縮が終わるタイミングで点火しているタイプが多いです。
  • お手製の端子磨きで接点を磨いていましたが、錆びによる電装系の影響ってやっぱあるんですか?
    • あります。錆ると抵抗になって電気が流れなくなります。スパーク力が弱まって全回転域でトルクが細くなります。
  • 中古の社外プラグケーブルを購入したのですが、どの気筒・イグニッションコイルへ繋ぐとか決まっていますか?
    • プラグケーブルは電気を通すだけのケーブルなので特に決められた気筒はありません。プラグケーブルに曲がりや長さが各々異なる場合は最適と思われる位置へ取り付けましょう。
  • イグニッションコイル側にプラグケーブルと接触する針ってプラグケーブルを入れれば自然と針と銅線って接触しますか?
    • 自然と配置されて接触すると思います。取り付けた後エンジンを始動してみましょう。始動すれば接触しています。
  • 端子にグリスを塗布していますけど、接点復活剤でも効果はあるでしょうか?
    • 接点復活剤にもよるのですが、KUREならコンタクトスプレーで保護効果があるそうです。ワコーズならウェットを使用すると効果はあります。ドライは酸化膜を落としてくれる製品で、ウェットは保護する製品と覚えておくと良いでしょう。