キャブレターの取り外し・取り付け方法
キャブレターのオーバーホールやインシュレーターの交換時にキャブレターを取り外し・取り付けする機会があります。
キャブレターが単体の場合と複数ある場合の脱着は注意点が異なるので確認した上で作業を行いましょう。
今回はキャブレターの取り外し・取り付け方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 時間: 約45分
- 費用: 無料
- ショップ工賃: 約3,500円
- 難易度: ★★★☆☆
作業手順
1.キャブレターの取り外し
燃料タンクをカウルステーやフレームに当たらないよう注意して取り外しましょう。
詳しくは、燃料タンクの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。
エアクリーナーボックスの固定バンドを取り外した後、エアクリーナーボックスを取り外しましょう。
詳しくは、エアクリーナーボックスの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。
その他作業の支障となるパーツを取り外しましょう。
参考車両の場合はエアダクトを取り外します。
燃料ホースのクリップを取り外した後、燃料ホースを取り外しましょう。
少量の燃料が出てくるのでウエスで受け止めましょう。
また、ジョイントをペンチやプライヤーで咥えて取り外すとジョイントとホースが破損する場合があるので使用は控えましょう。
各インシュレーターの固定バンドのネジを緩めましょう。
インシュレーターはキャブレター毎に取り付けられているので、4つキャブレターがあれば4つのインシュレーターの固定バンドを緩めましょう。
キャブレターを取り外しましょう。
- キャブレターが単体の場合:キャブレターをこじりながら引き抜く
- キャブレターが複数の場合:キャブレターの下部(フロートチャンバー辺り)を持ち上げる
キャブレターが複数ある場合は複数のインシュレーターに固定されているのでこじる事が出来ません。そこで、キャブレター下部を持ち上げる事でインシュレーターが変形して取り外す事が出来ます。
※樹脂製のパーツや強度が弱そうな箇所に力を加えると破損する可能性があるので注意しましょう。
エンジン内部にゴミが入らないようキャブレターとエンジン間にウエスを敷いておきましょう。
チョークケーブルを取り外しましょう。
ラジオペンチやプライヤーを使用するとワイヤーが解れる場合があるので使用は控えましょう。
スロットルワイヤーのアジャスター箇所を取り外しましょう。
スロットルワイヤーが2本取り付けられている場合は2本とも取り外しましょう。
スロットルワイヤー先端のタイコを横にスライドさせて取り外しましょう。
ラジオペンチやプライヤーを使用するとワイヤーが解れる場合があるので使用は控えましょう。
スロットルセンサーのカプラーがある場合は取り外しましょう。
その他、配線類がある場合は取り外しましょう。
以上でキャブレターを取り外す事が出来ます。
吸気ポートには異物が入らないようにウエスを丸めて詰めておきましょう。
上記画像は1枚のキムタオルは4枚薄いキムタオルから出来ているので、4枚に分けて各ポートに入れています。
2.キャブレターの取り付け
キャブレターにスロットルワイヤーを取り付けていきましょう。
スロットルワイヤーはキャブレターが外れている段階で取り付けましょう。
スロットルワイヤーが2本使われている場合はスロットルグリップを回転させてスロットルワイヤーの動きを確認しましょう。
スロットルグリップを操作すると一方のスロットルワイヤーは出てきてもう一方は戻るので、引き側と戻り側が判別できます。
同様にスロットルワイヤーが2本使われている場合はキャブレター側のスロットルワイヤーの取り付け位置を確認しましょう。
キャブレターのスロットルを手で押す、もしくは引くとスロットルが開くので引き側と戻り側が判別できます。
よく分からない場合は以下の手順に進んで下さい。
スロットルワイヤーの先端のタイコに万能グリスを薄く塗布しましょう。
金属同士が可動する部分なので抵抗を減らす為に塗布します。
スロットルワイヤーをキャブレターに手で取り付けましょう。
ペンチやプライヤーは使用するとワイヤーが解れる可能性があるので使用は控えましょう。
スロットルワイヤーが2本ある場合はもう片方も同様に取り付けましょう。
アジャスターをステーに仮止めしましょう。
スロットルグリップを捻りキャブレターのスロットルバルブが開くか動作確認しましょう。
開かない場合はスロットルワイヤーの取り付けが逆に取り付けられている可能性があります。
キャブレターをエンジンに取り付けましょう。
- キャブレターが単体、あるいは複数だがステーで連結されていない場合:キャブレターを押し込んだ後、車体を水平にしてからキャブレターと地面が垂直になるように角度を合わせましょう。
- キャブレターが複数の場合:キャブレターを力を加えやすいように持ち、上下に揺さぶりながら押し込みましょう。
キャブレターがインシュレーター内に入っている事を確認しましょう。
インシュレーターの固定バンドを締め付けましょう。
締め付けの目安として、ドライバーを軽く握り締め付けていき重くなった位置から1回転増し締め付けましょう。
アジャスター上下の固定ナットをスパナで緩めましょう。
下側の固定ナットをスパナで押さえたまま、アジャスターを反時計回りに指で回してスロットルグリップの遊びを調整しましょう。
スロットルグリップを捻ってみて遊び具合を確認しましょう。
後でスロットルグリップ側のアジャスターで微調整するので大体の調整で結構です。
アジャスター上下の固定ナットを締め付けましょう。
燃料ホースをキャブレターのジョイントに取り付けましょう。
ホースの根元まで押し込んだ後、ホースクリップを取り付けましょう。
チョークケーブルを少したるみを持たせて取り付けましょう。
チョークケーブルを張った状態で取り付けるとチョークが作動した状態で取り付ける事になるので注意しましょう。
スロットルセンサーを取り付けましょう。
アイドリングアジャスターをステーに取り付けましょう。
外れているパーツやネジの締め忘れが無いか指さし確認しましょう。
現段階で始動確認出来るようなら整備用サブタンクや代用のボトルを差し込んだ後、セルを回して始動確認しましょう。
負圧燃料コックの場合は1番か2番のキャブレターかエンジンのポートに1本のホースが繋がっているので、始動確認テストでは不要なのでホースにドライバーを差し込みホース穴を塞いで下さい。
ホースを塞がないとホースが繋がっている気筒だけが空気を吸い込む量が多くなり空燃比が薄くなりエンジン不調になります。
エアクリーナーボックスを取り付けましょう。
固定バンドはインシュレーターの締め付け同様、重くなる箇所から約1回転増し締めしましょう。
詳しくは、エアクリーナーボックスの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。
燃料タンクを取り付けましょう。
詳しくは、燃料タンクの取り外し・取り付け方法をご覧下さい。
スロットルグリップ側のアジャスターを回してスロットルグリップの遊び量を約2~6mmに調整しましょう。
詳しくは、スロットルグリップの遊び調整方法をご覧下さい。
最後にエンジンを始動してみて燃料漏れが無く正常に動作するか確認しましょう。
まとめ
- キャブレター取り外し時、インシュレーター固定バンドを緩めてスロットルワイヤー、配線を取り外した後以下のように取り外す。
- キャブレターが単体、あるいは複数だがステーで連結されていない場合:キャブレターを揺さぶりながら引き抜く。
- キャブレターが複数の場合:キャブレターの下部(フロートチャンバー辺り)を持ち上げて取り外す。
- キャブレター取り外し後、エンジンの吸気ポートにウエスを詰める。
- キャブレター取り付け時、以下のように取り付ける。
- キャブレターが単体、あるいは複数だがステーで連結されていない場合:キャブレターを押し込んだ後、車体を水平にしてからキャブレターと地面が垂直になるように角度を合わせる。
- キャブレターが複数の場合:キャブレターを力を加えやすいように持ち、上下に揺さぶりながら押し込む。
- キャブレター取り付け時、2本のスロットルワイヤーが使用されている場合はスロットルワイヤーをキャブレターに取り付けた後に動作確認した後に車体に取り付ける。
- インシュレーターの固定バンド取り付け時、ドライバーを軽く持ち重くなった箇所から更に約1回転増し締めする。
- キャブレター取り付け後、取り付けていないカプラーやワイヤー類が無いか指さし確認する。
Q&A
- スロットルワイヤーが数本解れてしまったのですが交換すべきでしょうか?
- 直ぐにスロットルワイヤーが切れる訳ではありませんが、交差点やコーナー、高速道路で断線すると危険なので交換が望ましいです。
- キャブレターのジョイントが金属ならプライヤーで咥えてもいいですか?
- 金属・樹脂関係なくプライヤーの使用は控えましょう。金属でも少し力を加えれば容易に変形してしまいます。
- 些細な事なのですがインシュレーターはキャブレター毎=気筒毎という解釈でもいいんですかね?
- 大抵の場合はそうなのですが、1気筒なのにキャブレターが2つ装着されている車種もあるのでキャブレター毎が適切な表現です。因みに該当する車種はヤマハのSRX250や確かホンダのGB250クラブマンも該当したと思います。
- キャブレターとエンジンの中間にあるゴムのインシュレーター?に亀裂が見えるのですが交換した方がよいでしょうか!?
- 交換しましょう。インシュレーターはゴムなので劣化すると亀裂が発生し、キャブレターでガソリンと空気の調合を行ったのにインシュレーターの亀裂による隙間から空気が入ってしまうと混合気が薄くなってしまいます。混合気が多い状態でエンジンを回し続けると、パワー感が減りエンジンが発熱し最悪エンジンが焼き付いてしまいます。また、インシュレーターは消耗品で在庫にも限りがあるので廃盤になる前に購入・交換しましょう。
- エンジンを始動させる際にチョークを引きますがほかにもバイスターターとかいう装置があるみたいですけど、どう違うんでしょう?簡単に教えて下さい。
- チョークは空気の量を少なくします。バイスターターは燃料を多く吹きます。
どちらも混合比(空燃比)を濃くする事で始動性を向上させています。
- チョークは空気の量を少なくします。バイスターターは燃料を多く吹きます。
- スロットルワイヤーのアジャスターって何ですか?
- スロットルワイヤーの長さを調整する調整器具がアジャスターです。スロットルグリップの遊びを調整するにはスロットルグリップ側とキャブレター側の2箇所のアジャスター(調整器具)があります。
主調整はキャブレター側で行った後、微調整はスロットルグリップ側で行います。
- スロットルワイヤーの長さを調整する調整器具がアジャスターです。スロットルグリップの遊びを調整するにはスロットルグリップ側とキャブレター側の2箇所のアジャスター(調整器具)があります。
- キャブレターをインシュレーターに取り付けた後にスロットルワイヤーを取り付ける事はできないのでしょうか?
- できる車種もありますが、無理に取り付けるとスロットルワイヤーが解れる場合があるので車体から取り外した状態でスロットルワイヤーを取り付けましょう。
- 訳あってキャブレターを良品に交換したのですが、スロットルグリップが回らなくなりました。原因は何が考えられますか?
- スロットルワイヤーが2本ある場合は引き側と押し側を逆に取り付けてしまった可能性が高いです。キャブレター側にスロットルワイヤーを2本取り付けたと思うのですが、2本を入れ替えてキャブレターに取り付けてみて下さい。後考えられる事は、スロットルワイヤーの通り道が間違っているかキャブレターのスロットルバルブが固着している可能性があります。
- キャブレターのインシュレーターを締め付ける際にドライバーに白マジックで印が書かれていますが、パーツクリーナーで落とせますか?
- 画像のように樹脂製なら落とせます。目立たない所で試してみると良いでしょう。
- チョークケーブルを引いた状態で取り付けると燃料が濃くなると書かれていますが、濃くなるとどんなデメリットがありますか?
- エンジンが不調になります。エンジンにはガソリンと空気の理想的な割合がありチョークを引いて空気量が少なくなるとエンジン内やマフラー内が煤まみれになります。
- インシュレーターを変形させて取り外しても良いのでしょうか?負荷が掛かりそうです。
- 変形させて取り外して問題ありません。負荷は掛かりますがそれでひび割れが入るようならインシュレーターが寿命なので交換しましょう。車種によっては、エンジンとキャブレターのフロートチャンバー辺りにブレーキキャリパーのピストン戻しツールを使って取り外す事も出来ますが、空冷エンジンなどフィンがある場合は少しの力でも折れてしまうので使用は控えましょう。
- 社外の燃料ホースに交換したのですが、ホースクリップが緩いのですが何か対策方法はありますか?
- 多少ならホースクリップをプライヤーで潰して内径を縮めるとテンションが強くなるので試してみて下さい。購入する場合、ホームセンターの農機具コーナーにホースクリップが販売していると思うので足を運んでみると良いでしょう。
- 燃料ホースをつなぐキャブのジョイントが破損してしまったのですが、パテとかで埋めて使えますかね?
- 交換しましょう。ガソリンに耐えれれば大丈夫なのかもしれませんが、もしパテが溶けてマフラー付近に掛かったら火災が発生する危険性があるので交換がセオリーです。燃料ラインは神経質な位になって頂ければと思います。
吸気系簡単用語解説
- ブローバイ:ピストンとシリンダーの間隙からエンジン内に漏れ出した気体
- スロットルセンサー:スロットルの開度の情報拾っているパーツ。電圧に置き換えて点火時期や燃料噴射の判断材料として使っている。
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