バイクの定期点検事項と整備方法
かじ取り装置
ハンドル
ガタ点検
ハンドルホルダの締め付けに緩みが無いか点検します。
- 点検方法は、ハンドルを上下左右に動かして緩みが無いか点検します。レンチを使用しても良いです。
- 緩みがある場合は指定トルクで増し締めを行いましょう。
操作の不具合点検
- フレーム下部から持ち上げるバイクリフト等を使用し、フロントホイールを浮かせます。
- ハンドルを左右に切って滑らかに動くか点検します。
- 引っ掛かりや、操作の重い箇所がある場合は、ハーネスやクラッチケーブルが干渉していないか確認し、問題なければステムベアリングの摩耗による段付きが考えられるので、点検し段付きがある場合は交換を行いましょう。
- ハンドルに対して、フロントフォークの曲がりやひねりが無いか点検します。
- 曲がりのある場合は、ホイールとフロントフォーク取り付けボルト緩めて、曲がりを直してから再度締め付けます。
- もし、曲がりが直らない場合は、フロントフォークやステムに曲がりがある可能性があるので、トップブリッジのフロントフォークに取り付けボルトとトップブリッジセンターナットを緩め、ストロークさせた後、指定トルクで締め付けて曲がりを直します。
- 曲がりが直らない場合は、ステムかフロントフォークの歪みが考えられるので、ダイヤルゲージを使用しインナーチューブの曲がり点検を行いましょう。
- 走行中にハンドルが異常に振られる場合は、ハンドルやホイールの点検を行いましょう。
ハンドル左右の回転角度点検
- ハンドルを左右一杯に切った際、左右で切れ角が異なっていないか点検しましょう。
- 切れ角が異なっている場合、フレームの各部にハンドルが干渉していないか点検しましょう。
- 異常のある場合、ストッパを点検し、損傷のあるものは修理・交換しましょう。
- ストッパが原因ではない場合、ハーネスやケーブルが噛んでいる可能性があります。サービスマニュアルのワイヤリング図でハーネス類の通り道を確認し、正しくワイヤリングしましょう。
- 社外メーターに交換してある場合、社外メーターに接触していないか確認しましょう。
フロントフォーク
損傷点検
- フロントフォークに曲がり・亀裂がないか点検しましょう。
- フロントブレーキをかけて、フロントフォークがスムーズにストロークするか点検しましょう。
ステムナットの緩み点検
- ステアリングステムのセンターナットに緩みが無いか点検しましょう。
- 緩みがある場合、トルクレンチを使用して指定トルクで締め付けましょう。
ステアリングステムの軸受け部のガタ点検
- フレームからジャッキアップし、フロントホイールを浮かせた状態で、フロントフォーク下端を握り、前後に動かしてガタがないか点検します。
- ガタがある場合、ステムの締め付け不良が考えられるので、締め付け点検を行いましょう。
- 締め付けでガタが直らない場合、ベアリング類の摩耗・損傷している可能性があるので、分解点検しましょう。
制御装置
ブレーキペダル
エア混入点検
- 油圧式ブレーキの場合は、ブレーキレバーおよびペダルを強く握り・踏み、空気が油圧ラインに混入していないか点検します。
- レバーの作動が柔らかく感じる場合は、ブレーキラインに空気が入っているのでエア抜き作業を行いましょう。
遊び点検
- ブレーキレバー・ペダルの遊びは、先端部の遊びを計測し、適正な遊び量である事を確認しましょう。また、ドラムブレーキの場合は左右にハンドルを切ってブレーキが作動しないか点検します。
- 作動する場合、ブレーキケーブルのワイヤリングが間違っている可能性があるので、サービスマニュアルのワイヤリング図で確認し・正しいワイヤリングになるよう通し直しましょう。
- ドラムブレーキは、遊び調整を行いましょう。
- 主調整は、ドラム側で行います。まずレバー側を締めて約2回転戻しの状態にします。ドラム側のロックナットを緩め、アジャストナットを回して調整します。
- 調整後、アジャストナットを固定しながらロックナットを締め付けます。
- 細かな調整は、副調整のレバー側で行うと良います。
※ブレーキレバーがクランプで固定されている場合は、クランプを緩めて作業します。
- ドラム側の遊び調整時、ロックナットが付いておらず、アジャストナットのみの場合、直接アジャストナットを回し、ブレーキの遊びを調整します。
- 調整後、ブレーキの遊びを確認します。
※アジャストナットの凹みとブレーキアームピンを必ず合わせる事。合わせないと走行中に遊びが大きくなりブレーキが制動しない可能性があるので要注意。 - 調整後、ブレーキレバー側で行いましょう。
- レバーにダストカバーが付いているものは、カバーをめくり調整を行いましょう。ロックナットを緩め、アジャスターを回してレバーの遊び調整を行いましょう。
※アジャスターを戻しすぎて、ネジの掛かり代が少ないまま使用すると、ねじを破損させる可能性があります。ネジ部の露出が8mm異常出る場合、一杯まで締めて2回転程戻した後、ドラム側で調整を行いましょう。
ブレーキの効き具合点検
- 安全な場所で走行し、前後ブレーキを別々に作動させ効き具合を点検しましょう。
ロッド及びケーブル類
緩み、ガタおよび損傷点検
- ブレーキレバー
- ブレーキペダル
- ブレーキトルクロッド
- ブレーキロッド、ケーブル(機械式ドラムブレーキ)
- ブレーキアーム(機械式ドラムブレーキ)
- キャリパー取り付けボルト(油圧ディスクブレーキ)
ブレーキロッド、トルクロッドなどの取り付けボルトの「割りピン」が確実に取り付けられているか点検しましょう。
ホース及びパイプ類
漏れ、損傷及び取り付け点検
- ブレーキを強く作動させ、ブレーキラインから液漏れが無いか点検します。
- 液漏れやにじみの兆候がある場合、直ちに部品の交換を行いましょう。
- ホース、パイプ及びジョイント部に劣化、損傷が無いか点検します。
- 結合部、クランプに緩みが無いかハンドルを左右に切った際や、走行中の振動によりホースやパイプが他の機構部分に干渉する恐れが無いか点検しましょう。
リザーバータンク
液量点検
- 液量がリザーバータンクの下限線(LOWER)近くまで減少している場合は、リザーバータンクキャップ・ダイアフラムを外し、推奨のブレーキフルードを上限線(UPPER)まで補給します。
- 液量の減少は、ブレーキパッド・ブレーキディスクの摩耗が考えられるので、ブレーキパッド・ブレーキディスクの残量を点検しましょう。また、液漏れが発生している可能性があるので、ブレーキラインに液漏れが無いか点検しましょう。液漏れしている場合は、ニップルかバンジョーボルトのシーリングワッシャーから漏れる可能性が高い傾向にあります。
注意事項
※ブレーキフルード補充時、異物や水を混入させない事。
※化学変化を防止する為、銘柄の異なるブレーキフルードを混合しない事。
※ブレーキフルードは、塗装面・樹脂・ゴム面を痛める為、部品類に付着させない事。
※リザーバータンクが水平な状態でブレーキフルードを補充します。
マスターシリンダー、ホイールシリンダー、ディスクキャリパー
機能、摩耗および損傷点検
- ブレーキを作動させ、マスタシリンダー、キャリパーの作動具合を点検します。
- マスターシリンダー、キャリパーに損傷がないか点検します。不具合のあるものは、分解整備を行いましょう。
不具合があると、キャリパーが固着していると車体を手で押した際にブレーキを引きずり重く感じます。ブレーキラインにエアが噛んでいるとブレーキレバーの感触がありません。ブレーキレバーがマスターピストンをえぐっていたり、マスターピストンが固着していると、ブレーキレバーが動きません。主にそれら4つの可能性が高いです。
部品の交換
下記の部品を交換します。
- マスターシリンダーピストンセット
- キャリパーダストシール及びオイルシール
- ブレーキフルード
ブレーキドラム及びブレーキシュー
ドラムとライニングとの隙間点検
ホイールを浮かし、手でホイールを回してブレーキの引きずりが無いか点検します。引きずりが過大な場合、以下の点検整備を行いましょう。
- ブレーキカムの清掃・注油
- ブレーキシューアンカーピンの清掃・注油
- ブレーキケーブルの作動不良
- ブレーキリターンスプリングのへたり
- ホイールベアリングの損傷、アクスルシャフトの曲がり
シュー摺動部分及びライニング・ドラムの摩耗点検
- ブレーキを作動させた際、ウエアインジケーターの矢印がブレーキパネルの「△」マークにあう場合は、ブレーキを分解し、シュー・ドラムの摩耗を点検します。
- シューに摩耗がある場合は交換しましょう。
- ドラムに亀裂・著しい腐食が見受けられる場合は交換しましょう。
※ウエアインジケーターが使用限度を示す前にブレーキの調整代が無くなった場合は、ブレーキアームを外してセレーションを一山おくり対応します。
ブレーキディスク及びブレーキパッド
ブレーキディスクとブレーキパッドの隙間点検
ホイールを浮かし、手でホイールを回してブレーキの引きずりがないか点検します。ひきずりが過大な時は、下記の点検整備を行いましょう。
- キャリパーのスライドピンを清掃・注油(耐熱シリコングリス)します。
- ブレーキライン(油圧系統内)に異物が浸入している場合は、ブレーキフルード交換を行います。
- キャリパーピストンのシール(オイルシール・ダストシール)が劣化・シールとキャリパー間に汚れが堆積している場合は汚れを除去します。(キャリパーオーバーホール)
ブレーキパッドの摩耗点検
- ブレーキパッドの摩耗限界溝(あるいは摩耗限界線)までブレーキパッドが摩耗している場合は、ブレーキパッドをセットで交換します。
ブレーキディスクの摩耗及び損傷点検
- ブレーキディスクの摺動面に著しい掻き傷、摩耗、曲がりが無いか点検します。石がブレーキパッドとディスク間に入り込むと掻き傷が発生します。ブレーキディスクは、垂直(横)一方向への力に弱いのでタイヤ交換時等に誤って曲がってしまう可能性があります。
ブレーキフルードの交換
- ブレーキフルードは使用過程で空気中の水分を吸収し、ブレーキフルードの沸点の低下、油圧系統内の錆発生などブレーキフルードとしての性能劣化がさけられないので定期的に交換します。
交換は、2年毎に行いましょう。放置すると結晶化しエアが混入し制動しなくなるので注意しましょう。
走行装置
タイヤの空気圧点検
- タイヤゲージで各タイヤの空気圧を測定します。尚、タイヤは冷間時(冷えている状態)に行います。
タイヤの空気圧が不適正のまま使用すると、操舵性や乗り心地の悪化、タイヤの編摩耗などの悪影響があるので注意しましょう。 - タイヤの空気圧調整時、抜いて指定値に調整します。
- 指定のタイヤ空気圧は、サービスマニュアルで確認しましょう。
※空気圧が低すぎる状態で荷物を多く積載したり、連続高速走行すると、タイヤが過熱しバースト(破裂)する恐れが有ります。1ヵ月に1度は点検・調整を行いましょう。
タイヤの亀裂及び損傷点検
- タイヤへのトレッド及びサイドウォール部に亀裂、および損傷が無いか点検し、不具合のあるものは交換しましょう。
タイヤの溝の深さ及び異常な摩耗点検
- タイヤのトレッドにウエアインジケーター(摩耗限度表示)が現れたらタイヤを交換します。その他、異常な編摩耗がないか点検します。
※ウエアインジケーターはタイヤの円周上数ヵ所にある。この場所を示す為、タイヤのサイドウォール部に”△”マークが付けられている。
タイヤの金属片、石その他の異物点検
- タイヤに釘、金属片、石、その他の異物が噛み込んだり、刺さったりしていないか点検します。
ホイールナット及びホイールボルトの緩み点検
- 前後ホイールの下記部品に関連するボルト、ナットに緩みが無いか点検します。
- アクスルシャフト
- アクスルナット
- アクスルホルダ
- リム及びハブ
※コッタピンを使用しているものはコッタピンの取り付け状態に異常が無いか点検します。
リム、再度リング及びホイールディスクの損傷点検
- 下記部品に亀裂、変形、損傷、腐食などがないか点検します。
- リム
- ホイール
- スポーク
- ホイールを浮かせ、ゆっくり回してリムの縦、横方向の振れを点検します。
使用限度の振れ:横方向:2.0mm以下、縦方向:2.0mm以下 - コムスターまたはキャストホイールは振れの修正は出来ない為、ホイールベアリングのガタ、アクスルシャフトの曲がりを点検したうえで、ホイールを交換します。
- スポークホイールのリムに局部的な変形がある場合は、リムを交換します。
- スポークホイールのゆるやかな振れは、スポークの張りで修正します。
- スポークホイールでは、スポークをレンチなどで軽く叩いてゆるみを点検します。ゆるみのあるスポークはニップルレンチで均一に締め、リムの振れを点検します。
フロントホイールベアリングのガタ点検
- フロントスタンド等を使用しフォークが動かないようにフロントホイールを浮かせ、ホイールを揺すってガタがないか点検します。異常なガタがある場合は、ホイールベアリングの点検を行いましょう。
リアホイールベアリングのガタ点検
- リアホイールを浮かせ、ホイールを揺すってガタがないか点検します。異常なガタがある場合はホイールベアリングの点検を行いましょう。
※スイングアームピポットのガタも含まれるため、ホイールベアリングのガタか、スイングアームピポットのガタかを確認して下さい。
緩衝(かんしょう)装置
サスペンションのスプリング
損傷点検
- 車体に乗車し、フロント及びリアサスペンションを伸縮させて作動を点検します。
- サスペンションスプリングが露出しているものはスプリングに亀裂や損傷が無いか点検し、該当する場合は交換しましょう。
サスペンションアーム
連結部のガタ及びアームの損傷点検
- シートレールを吊り上げたり、エンジン下部持ち上げる等してリアホイールを浮かせ、スイングアームを上下左右に揺すってガタが無いか点検します。
- ガタがある場合は、スイングアームピボットブッシュ(またはベアリング)に摩耗、損傷が無いか点検し該当する場合は交換しましょう。
- プロリンク式サスペンションでは、スイングアーム端の上下方向に異常がガタが見られる場合、サスペンションリンケージ及びショックアブソーバマウントブッシュの摩耗、損傷を点検します。
ショックアブソーバ
油漏れ及び損傷点検
- フロントフォークのオイルシールからのオイル漏れ、インナーチューブの摺動面に外傷、摩耗、メッキの剥離がないか点検します。
- フォークにラバーブーツが取り付けられているものはブーツをめくって点検します。不具合のあるものは分解整備を行いましょう。
- フォークインナーチューブに傷のある場合、オイルシール、ダストシール、インナーチューブ共に交換します。
- ボトムリンク式フロントフォークについては、フォークボトムリンクに亀裂、損傷等がないか点検します。
- フォークボトムリンクの軸受け部にガタが無いか、締め付けナットに緩みが無いか等を点検します。
- ショックアブソーバのピストンロッド周りにオイル漏れや摺動面に外傷、摩耗、メッキの剥離が無いか点検します。不具合のあるものはショックアブソーバを交換します。
取り付け部のガタ点検
- 緩衝装置の取り付け部にゆるみ、亀裂及び損傷が無いか点検します。
- ボルト、ナットなどにゆるみのある場合は、増し締めを行いましょう。
動力伝達装置
クラッチ
クラッチレバーの遊び点検
- ケーブル作動のマニュアル式クラッチはレバーの先端部で遊びを点検します。遊びが多いとクラッチの引きずりやギアシフト時のペダル操作間の悪化となり、遊びが少ないとクラッチの滑りなどの不具合になります。
- クラッチの遊びが規定値にない場合はケーブルの端あるいは中間にあるアジャスタで調整します。
- 主調整はクラッチアーム側で行いましょう。ロックナットを緩め、アジャストナットを回してレバーの遊びを調整します。
※上側アジャスター(レバー側)を一杯にねじこんでから調整すれば次の調整は上側アジャスターで容易に行えます。 - 調整後、アジャストナットを固定し、ロックナットを締め付けます。
- 微調整は、クラッチレバー側で行いましょう。レバーにダストカバーが付いているものは、カバーをめくって調整します。ロックナットを緩め、アジャスターを回してレバーの遊びを調整します。
※アジャスターを戻しすぎ、ネジの掛かり代が少ないまま使用するとネジが破損する事があります。ネジ部が8mm以上出る場合は、一旦アジャスターを一杯にねじ込み、クラッチアーム側で調整します。 - ケーブルの途中にアジャスターの付いているものも、同様にロックナットを緩め、アジャスターを回してレバーの遊びを調整します。
スーパーカブ系の自動遠心クラッチは下記用容量で調整を行いましょう。
- ロックナットをゆるめ、アジャストボルトを約1回転締め込み、次にボルトが重くなるまで緩める。重くなった位置から1/8~1/4回転戻し、ロックナットを締め付ける。
※ロックナットの締め付け時、アジャストボルトが供回りしないようにします。
※調整後、クラッチの作用を点検します。
クラッチフルードの量点検
- 油圧式クラッチは遊びの調整はできないのがクラッチの液量を点検します。
- 液量がリザーバーの下限線(LOWER)近くまで減少しているときは、リザーバーカバー、ダイアフラムを外し、推奨ブレーキフルードを上限線まで補給します。
※ブレーキフルードの補給時にゴミや水を混入させない事。化学変化を防止する為、銘柄の異なるブレーキフルードを混用しない事。ブレーキフルードは塗装、樹脂mゴム面を痛める為、部品類に付着させない事。液量の点検及び、補給は、リザーバータンクカバーの上面が水平な状態で行う事。液量の減少が著しい場合は、油圧系統に液漏れがないか点検を行いましょう。
作用点検
クラッチレバーを操作し、クラッチのつながり及び、切れ具合を点検します。不具合のある場合、下記の点検をします。
- 機械式マニュアルクラッチではレバーの遊び。
- 油圧式クラッチでは油圧系統内への空気または異物の混入、液量不足
- スーパーカブ系の自動遠心式クラッチではクラッチの調整
- 湿式クラッチではエンジンオイル、もしくはミッションオイルの過多、粘度の不適正。
上記の点検で不具合の無いものは、クラッチの分解整備を行いましょう。
トランスミッション
オイル漏れ及びオイル量点検
- エンジン各部の本体、合わせ面などからオイル漏れが無いか点検します。オイル漏れが認められるエンジン(2サイクルエンジンはミッション)オイル量の点検を行いましょう。
- エンジンを停止し、オイルチェックボルトを外し、ボルト穴まで油面があるか点検します。オイル量が少ない際は、推奨オイルをボルト穴からオイルが出るまで補給します。
※オイル量点検は水平な場所でメインスタンドを立てるか、車体を垂直に支える事。 - シャフトドライブ駆動車は、ファイナルギアケースについて、エンジンと同様にオイル漏れ及びオイル量の点検を行いましょう。
- ギアケースからレベルホールキャップを外し、キャップ穴下端にオイル量があるか点検します。オイル量が少ない時は、キャップ穴下端まで推奨オイルを補給します。
※オイル量点検は水平な場所でメインスタンドを立てるか、車体を垂直に支える事。 - スク―ターはファイナルリダクションギアケースについて、エンジンと同様にオイル漏れ及びオイル量点検を行いましょう。
- エンジンを停止し、オイルチェックボルトを外し、ボルト穴までオイル量があるか点検します。オイル量が少ない時は、推奨オイルをボルト穴下端まで補給します。
※オイル量点検は水平な場所でメインスタンドを立てるか、車体を垂直に支える事。
操作機構のガタ点検
- チェンジペダルなどの取り付け部にゆるみ、ガタが無いか点検します。
- リンク式のものはリンク機構を含め点検します。
給油脂
ミッションオイルの交換(2サイクルエンジン)
2サイクルのミッションオイルは密閉されたクランクケースの中でトランスミッションなどを飛沫潤滑しており、4サイクルの潤滑方法に比較してオイルの劣化が少ないため、交換時期は長くなっている。交換時期はサービスマニュアルで確認します。
- エンジンを暖機し、オイルを軟らかくするとオイルが抜けやすくします。
- オイル注油口キャップを外します。
- クランクケース下部付近についているオイルドレンボルトを外し、オイルを抜き取ります。
- オイルが完全に抜けてから洗浄したドレンボルトとシーリングワッシャーを取り付け、指定のトルクで締め付けます。
※損傷しているシーリングワッシャーは交換します。 - オイルチェックボルトを取り外し、ボルト穴からオイルが出るまで推奨オイルを徐々に注入し、チェックボルト及びキャップを取り付ける。
プロペラシャフト及びドライブシャフト
連結部の緩み・スプライン部のガタ・自在継手部のガタ点検
- エンジンを止めてリアホイールを浮かせる。
- トランスミッションのギアを一速に入れ、リアホイールを手で回転方向に動かし、異常なガタがないか点検します。異常なガタがある場合、下記の点検整備を行いましょう。(該当しない部品は除く)
- ドライブシャフト、ユニバーサルジョイントなどの駆動軸のスプライン接合部の摩耗、損傷。
- ユニバーサルジョイントのガタ。
- ファイナルギアAssy.またはサイドギアAssy.本体のバックラッシュ過多。
- ドライブシャフトダンパの不具合。
給油脂
ファイナルギアオイルの交換(シャフトドライブ方式)
- オイルの交換時期は、サービスマニュアルで確認。
- ファイナルギアケースからレベルホールキャップを外す。
- ギアケース下部付近に付いているオイルドレンボルトを外し、リアホイールをゆっくり回し、オイルを抜き取ります。
- オイルが完全に抜けてから洗浄したドレンボルトとシーリングワッシャを取り付け、ドレンボルトを規定のトルクで締め付ける。
※損傷しているシーリングワッシャーは交換します。 - 車体を水平にします。
- 推奨オイルを規定レベルまで補給します。
- レベルホールキャップのOリングにオイルを薄く塗布し、キャップを取り付ける。
リアホイールギアボックスのオイルの交換(スクーター)
- オイルの交換時期は、サービスマニュアルで確認。
- エンジンを停止し、オイルチェックボルトとドレンボルトを外し、オイルを抜き取る。
- オイルが完全に抜けてから洗浄したドレンボルトとシーリングワッシャーを取り付け、ドレンボルトを締め付ける。
※損傷しているシーリングワッシャーは交換します。 - 車体を水平にします。
- チェックボルト穴から推奨オイルを規定レベルまで補給し、チェックボルトを締め付けます。
チェーン及びスプロケット
チェーンの緩み点検
※ドライブチェーンが回転中は指を挟む危険があるので点検、調整の際は必ずエンジンを停止して下さい。
- チェーンの遊びが少ないと、後輪がストロークするにつれて、両スプロケットの軸間が変化する為、ストローク時にチェーンの張りすぎとなり、チェーンを痛めたり、フリクション(摩擦)が過大となって走行性能に影響を与える事があります。
- チェーンの遊びが過大過ぎると走行中にチェーン振れ幅が大きくなり、チェーン外れや、フレームに接触して部品の破損を招く事があります。
- ギアをニュートラルにし、メインスタンドまたはサイドスタンドで車体を支えます。(一部車種はリアホイールを浮かせて点検する場合がある為サービスマニュアルを参照)
- 下側チェーンの両スプロケットの中間付近のチェーンの振幅が最大になる位置でチェーンの遊びを点検します。
- チェーンテンショナー付きの場合テンショナーをゆるめた状態で点検します。
調整は以下の手順で行いましょう。
- ホイールが動く程度にリアアクスルナットを緩める。
- スーパーカブなどリアホイールドリブンフランジが、スリーブナットで固定されている機種では、スリーブナットを緩める。
- アジャスターのロックナットを緩め、アジャストナットまたはボルトを回し、遊びを調整します。スネイルカム式ではアジャスタープレートを回して調整します。
※アジャスターには調整位置を示す目盛りが付けられています。このアジャスターの調整目盛り左右同じ位置とします。調整が不揃いな場合、ホイールの整列が狂い、ハンドルが取られることがあるので注意しましょう。 - 調整後、アクスルナットを指定トルクで締め付ける。
※手でチェーンを押し付けるように荷重を掛けながらアクスルナットを締め付けるとアジャスタのガタがなくなり、アクスルの締め付け時に遊び変化が少なくなる。 - チェーンの遊びを再度点検します。
- アジャスターを増し締めし、ロックナットを締め付けます。
- リアブレーキペダルの遊びを調整します。(ディスクブレーキバイクを除く。)
- ドライブチェーンの調整後、アジャスターの合わせマークなどがチェーンインジケーターラベルの赤ゾーン(交換時期)に入ったらドライブチェーンを交換します。(インジケーターラベル適用者のみ)
- ドライブチェーンを交換した場合、チェーンの調整後、ラベルのグリーンゾーンの始め(赤損の反対)側を合わせマークに合わせて貼り付ける。
- チェーンのリンクに固着箇所がないか点検します。固着の程度が軽い場合は洗油や灯油の中でほぐし、滑らかになったらオイルを給油します。
- Oリング入チェーンの場合、洗油、灯油は速やかに拭き取り、十分に乾燥させます。固着が直らずリンクの作動が滑らかでないものやリンクプレート、ローラーに損傷があるものは交換します。
- オフロード系の一部車種に採用されているOリング付きマスタリンクはローラーとマスタリンクプレート間に4箇所のOリングを取り付け、チェーンクリップをピンの溝に差し込む。マスタリンクプレートとクリップの間に隙間の無い事を確認します。
- ドライブチェーンに泥などが付着したり、油分が切れるとチェーンの寿命を著しく縮める為、清掃・給油を行いましょう。
[Oリング入りチェーン]
※Oリング入りチェーンは、清掃給油時は、以下の作業を行わない事。Oリングの劣化やグリスの流入を招き、チェーンの寿命を縮める事になる。
- スチームまたは高圧洗浄機の使用。
- ガソリンの塗布。
- 洗剤などでチェーンの汚れを落とします
- 十分に乾燥させてた後、#80-90ギアオイルやチェーンルブ・チェーンオイルをまんべんなくチェーンに塗布します。
余分についたオイルは飛散するので拭き取っておきましょう。
[Oリング無しチェーン]
- 灯油等でチェーンの汚れを洗い落とし、十分乾燥させて#80-90ギアオイル又は専用スプレーグリスをまんべんなくチェーンに塗布します。
余分についたオイルは飛散するので拭き取っておきましょう。
スプロケット点検
- ドライブ、及びドリブンスプロケットの摩耗、損傷を点検します。
※チェーンとスプロケットはセットで交換します。チェーンと新品スプロケット、または逆の組み合わせの使用は噛み合いピッチが合わなくなり、古いほうの部品が早期に損傷します。 - ドライブ及び、ドリブンスプロケット取り付けボルト、またはナットの緩みを点検し、緩みのあるものは増し締めします。
ローラー溝の深さ点検
- ドライブチェーンが直接、フレーム部品に当たるのを保護したり、チェーンが外れないようガイドするための樹脂部品(ガイドローラー、スライダー、スリッパ等)が摩耗、損傷してい無いかを点検します。これらの樹脂部品が摩耗、損傷してチェーンが直接金属部品に干渉していると、チェーンの切断、外れ、あるいはフレーム部品の損傷等を招く事になります。
ベルトケースエアクリーナーの点検(スクーター)
- スクーターのドライブベルトケースの通気口にクリーナーエレメントのあるものはエレメントを外し、清掃します。
- エレメントを水洗いし、十分に乾燥させてから取り付けます。
電気装置
点火装置
点火プラグ点検
- スパークプラグを外す際にゴミが燃焼室に入らないよう、プラグ座面を圧縮空気などで清掃した後プラグを外しましょう。
- プラグの中心及び、速報電極の消耗、腐食、燃孫、碍子部の損傷などを点検し、必要なものは交換します。また、絶縁碍子部の焼け具合が良好かを点検します。
- きつね色~薄ねずみ色に焼けていれば良好。
- くすぶり、濡れの有るものは、プラグの熱価の不適正、または燃料の混合気が濃い。ホットタイプのスパークプラグに交換するか、燃調を薄くセッティングを行いましょう。
- 漂白状に白く、斑点状に堆積物が溶着または凝集しているものはプラグの熱価の不適正(焼けすぎ)または燃料の混合気が薄い。または点火時期の不良。→冷え型のプラグを使う。または燃調を濃くセッティング。※プラグの焼けはあくまでも目安として判断します。
- プラグの熱価変更は車両の走行条件を考慮してオプションプラグ範囲内で選択します。
- 通常の乗り方でプラグの焼け具合が不適正で不調症状のある場合、混合気の濃さや点火時期を点検しましょう。個の場合は、プラグの熱価変更でプラグの焼け補正を行っても意味が無いので注意します。
- ワイヤーブラシまたはプラグクリーナーを使ってプラグの電極部の堆積物を清掃します。
- タイヤ―タイプのプラグゲージで中心電極と速報電極の隙間(プラグギャップ)の点検をし、規定値外のものは側方電極を曲げてギャップを調整します。シリンダヘッドに取り付ける。
※シリンダヘッドのねじ山の損傷を防ぐため、プラグの取り付けは手でシリンダヘッドにねじ込んでから、プラグレンチで締め付けます。 - シリンダヘッドのプラグ穴座面にゴミの付着が内容に清掃します。
- 新品プラグの場合は、シーリングワッシャーが座面に当たってから、1/4回転締め込む。再使用する場合は指定トルクで締め付ける。
※必要以上に締め付けない事。
点火時期/進角装置(遅角機構を含む)の機能点検
CDI,フルトランジスタ式点火装置採用者は、機械的な摩耗による性能劣化が無いため、定期点検は不要です。コンタクトポイント式点火装置採用者は定期点検を行いましょう。
断続器の状態点検
コンタクトポイント式点火装置採用者はポイント(断続器)の状態を定期的に点検を行いましょう。点検要項はサービスマニュアル参照。
バッテリー
液量点検
- 開放型バッテリーはバッテリー液量を点検しましょう。MFバッテリー(メンテナンスフリーバッテリー)は液量の点検不要です。
※バッテリー液は希硫酸で、皮膚、目、衣服に付着すると、火傷や失明の危険がある為、直ちに多量の水で洗い流す。目に入った場合は水で洗い流した後、専門医の診察を受ける事。 - バッテリーケースにひび、亀裂などが無いか点検しましょう。
- バッテリー内部の電極部に白い堆積物(サルフェーション現象)があったり、セルの底に電極板の脱落物の堆積が多い時はバッテリーを交換しましょう。
- バッテリーケースの横にある下限線(LOWERLEVEL)と上限線(UPPERLEVEL)の間に各セル液面があるか点検しましょう。
- もし、下限線近くに量が減っている場合は車体からバッテリーを取り外し、フィラーキャップを外して液量が上限線に届くまで蒸留水を補給しましょう。液を補充した後、各フィラーキャップを確実に取り付けバッテリーを取り付ける。
※補充液は蒸留水を補給します。水道水等は鉱物質が含まれている場合があり、バッテリーの寿命を縮める事がある。 - バッテリーの上限線以上まで蒸留水を補充しない事。振動でバッテリー液がこぼれ、車体部品を腐食させる事がある。
- 液を補充した後、各フィラーキャップを確実に取り付け、バッテリーを車体に取り付ける。
※バッテリーコーションラベルに従い、ブリーザーチューブが正しく配管されているか、またチューブに折れ曲がりや噛み込みによる通気不良が無いか点検しましょう。ブリーザーチューブの詰まりはバッテリーの内圧が抜けなくなり、ブリーザーチューブの外れや、バッテリーの破損の恐れがある。
ターミナル部の接続点検
- バッテリーのターミナル部の締め付けが緩んでいないか点検しましょう。
- ターミナル部に腐食がある場合は、バッテリーを取り外し、ぬるま湯で錆を洗い流してから、ワイヤ―ブラシなどで磨いて腐食部を完全に取り除きます。
- バッテリーにターミナルを接続し、ターミナルにグリスを薄く塗布しましょう。
電気配線
接続部の緩み及び損傷点検
- コネクター、カプラーなどに緩みや損傷が無いか点検しましょう。
- ワイヤーハーネスの被覆に破れや、噛み込みによる損傷などが無いか点検しましょう。特にステアリングヘッド付近のワイヤーハーネスは、動きで噛み込みや屈曲、摺動による損傷が多いため、良く点検しましょう。
原動機
本体
掛かり具合及び異音点検
- エンジンの始動性を点検しましょう。異常に掛かり難い場合は、故障診断を参照し点検整備を実施しましょう。
- アイドリング中にエンジンから異音が無いか点検しましょう。異音がある場合は、サウンドスコープなどで異音の発生箇所を診断し、点検整備を実施しましょう。
低速及び加速の状態点検
- アイドリングから滑らかに、エンジン回転が繋がるか点検しましょう。アイドリング回転を確認し、必要な場合は、キャブレターのスロットルストップスクリューを回して調整しましょう。
※点家の予備調整は暖機運転後に行う事。冷間時と暖機時ではアイドリング回転数が変化しましょう。 - 平らな床面でメインスタンドを立てるか、車体を垂直にさせてアイドリング回転の点検・調整はを行いましょう。車体が傾いていると、キャブレターの油面が変動し、正しいアイドリング回転が得られなくなる事があります。
排気の状態点検
エンジンを充分に暖機運転後に、排気の色を点検しましょう。
マフラーから白い煙が出る
4サイクルエンジンの場合は、燃焼室にオイルが入って燃えている可能性がある為、下記の点検整備を実施しましょう。
- エンジンオイル量の過多
- シリンダー、ピストンリング(特にオイルリング)の摩耗、損傷
- バルブガイド又はステムの摩耗、バルブステムシールの損傷
2サイクルエンジンの場合は以下を点検整備しましょう。
- オイルポンプコントロールケーブルの調整不良
- マフラー内のオイルの堆積
- エンジンオイルの劣化、品質不良
マフラーから黒い煙が出る
不完全燃焼状態の為、下記の点検整備を実施しましょう。
- スパークプラグの状態及び点火時期
- エアクリーナーの詰まり
- 燃料系統(混合気の濃過ぎ)
エアクリーナーエレメントの点検
- エレメントが汚れている場合は混合気が濃くなり、エンジン不調の原因となる為、定期的な点検・清掃・交換が必要です。
- ホコリの多い地域で使用する車両は早めの点検整備を行う事。
- 燃料タンク下もしくな、シートサイドに配置されている場合が多いです。エレメントを取り付ける際は以下の事に注意しましょう。
※接合部にラバーシールがある場合、シールに薄くグリスを塗布すれば接合部の気密性が良くなる。 - エレメントまたはエレメントホルダーの取り付けが確実か、ほこりを吸い込まないか確認しましょう。
湿式ウレタンフォームのエレメント
- エレメントを取り外し、洗油や白灯油の中で、エレメントを軽くもみながらエレメントに付着したごみを洗い流し、十分に乾燥させる。
※ガソリンや酸性、アルカリ性、有機性の揮発油などでエレメントを洗浄しないこと。引火などの思わぬ事故や粗い油のしゅるいによっては、エレメントの劣化や接着剤の剥離を招く場合があります。 - 綺麗なギアオイルを塗布し、両手で良く揉み込んでエレメント全体にまんべんなく染み込ませ余分なオイルを絞ります。
※エレメントを絞るとエレメントを損傷させる場合があるので、握るようにして絞る事。
ろ紙型エレメント
- エレメント表面の汚れがある場合、まずエレメントを軽く叩き表面のホコリを落としてからろ過面の内面(キャブレター側)からろ紙表面に付着したほこりを圧縮空気で吹き飛ばします。
ビスカスろ紙式エレメント
- エレメントに油分が付着している為、清掃はできません。定期的にエレメントを交換しましょう。
バルブクリアランス点検
油圧タペット採用車は調整は不要です。
4サイクルエンジンのIN/EXバルブとバルブ開閉機構の間には適正な隙間(バルブクリアランス)が必要です。これは燃焼室の熱がバルブに伝わり、バルブの熱膨張により寸法が変わる為です。
バルブクリアランスが大きすぎると、エンジンの騒音(タペットノイズ)発生の原因になります。隙間が少なすぎると、熱感時にバルブが突き上げられ、圧縮圧力が低下しアイドリング不調となります。
※バルブクリアランスの点検及び調整はエンジンが冷間時に行う事(35℃以下)
- バルブクリアランスの点検、調整はカムシャフトが圧縮上死点の位置で行いましょう。
- 圧縮上死点の位置はクランクシャフトを回し、フライホイールローターなどに刻印されているTマーク (上死点マーク)とクランクケースカバーなどにある合わせマークを合わせた際、ロッカーアームにガタがある事で確認しましょう。
- もし、Tマークと合わせマークを合わせても、ロッカーアームにガタがない場合は、排気上死点になっているため、クランクシャフトを1回転してTマーク合わせを再度行えば圧縮上死点になります。
- 直打式タイプの場合は、プラグホールを密閉するように手を当ててクランクシャフトを回し、手に圧が来た際のTマークが圧縮上死点になります。
- 点火順序が1-2-4-3の直列4気筒エンジンではバルブクリアランスの点検は、クランクシャフトを2回転すれば全気筒の点検・調整を行えます。直列4気筒エンジンの場合左から1-2-3-4と数えます。
- V2,V4エンジンは各気筒毎に圧縮上死点にして、点検調整をおこないます。
- バルブクリアランスの測定時に基準値の上限値の厚さのシクネスゲージが入らず、下限値が入れば良好です。シクネスゲージは、入らない直前の値が測定値になります。
※エンジンの始動時に、バルブをリフトさせる出コンプ機能のあるものは、出コンプの調整を先に行わなければ正しいバルブクリアランス点検ができません。 - 測定箇所の横方向から、シクネスゲージを真っすぐに差し込んで点検する事。斜めに差し込んでしまうと、正しい点検ができません。クリアランスが大きくなります。
- 一般的なスクリューアジャスト式のバルブクリアランス点検はバルブステム端とアジャストスクリューの間にまっすぐにシクネスゲージを差し込み、クリアランスを点検しましょう。
- 片側ボールジョイント式のエンジンでは、ロッカーアームとカムの間にシクネスゲージを差し込み、隙間を点検しましょう。
- バルブリフター直押し方式のエンジンはカム山とリフターまたはシムの間の隙間をシクネスゲージで点検しましょう。
- 点検の結果、調整が必要な場合はロックナットとアジャストスクリューを緩め、測定位置に基準の中央になる厚さのシクネスゲージ(0.06~0.10mmの場合は0.08)を差し込みます。
- アジャストスクリューを回し、シクネスゲージを真っすぐに引いた際、少し重く抜ける程度に隙間調整しましょう。シクネスゲージを差し込んだままアジャストスクリューが回らないように注意してロックナットを指定トルクで締め付けます。
※ロックナットの締め付けトルクが不足すると、ナットの脱落など故障の原因となることがあるので十分注意して下さい。 - 調整に専用工具が指定されている場合は必ず使用して下さい。
- ロックナットを締め付けた際、隙間が変化する事がある為、必ず隙間の再点検して下さい。シクネスゲージを真っすぐに引いた際、少し重く抜ければ良好。変化のある場合は再調整しましょう。
- バルブシフタ直押し方式は、シムを交換してバルブクリアランス調整をしましょう。調整方法はサービスマニュアル参照。
カムチェーンの点検
自動調整式カムチェーンテンショナーは定期的な調整の必要はありません。マニュアル調整式テンショナーのみ実施する必要があります。
調整方法はサービスマニュアル参照。
潤滑方式
油の汚れ及び量点検
注意事項
- 車体が斜めのままオイル量を点検すると正しく測定できません。
- 4サイクルエンジンでもオイルは自然に少しずつ消費されるため、時々オイル量を点検する必要があります。
- 4サイクルエンジンのオイル量が多すぎるとオイルが燃焼室に入るオイル上がりやクラッチ切れが悪くなる場合があります。少なすぎるとエンジンの焼き付きや各部の摩耗の原因になる。
- 補給するオイルは銘柄やグレードの異なるオイル、低品質のオイルを混用すると変質などで潤滑性能が損なわれることがあります。
- 4サイクルエンジンでは油量点検の前に一旦エンジンを始動し、エンジン内にオイルを充分に回してから油量を測定しましょう。特に、ドライサンプエンジンでは油面の変化が大きいので注意する事。
2サイクル分離給油式
- メインスイッチをONにした際、オイルレベルインジケーターが点灯していないか確認しましょう。
- インジケーターが点灯する場合は推奨エンジンオイルをオイルタンクに補給しましょう。
- オイルレベルインジケーターの無い車種は、のぞき窓でエンジンオイル量の確認を行いましょう。
- 推奨エンジンオイルはサービスマニュアル参照。
4サイクルウェットサンプエンジン
- エンジンを暖機運転し、エンジンオイルを充分温める。
- エンジンを停止し、オイルレベルゲージを外して綺麗なウエスでゲージ部分のオイルを抜き取る。
- エンジンを停止してから2~3分後に車体を垂直に立て、レベルゲージをねじ込まずにエンジンに差込み、オイルの量を測定しましょう。
- ゲージの下限線と上限線の間に油面があれば良好。もし、下限線近くや下限線以下までオイル量が減っていたら、上限千まで推奨または指定のエンジンオイルを補給しましょう。
推奨オイルはサービスマニュアル参照。
4サイクルドライサンプエンジン
- エンジンを暖機運転し、エンジンオイルを充分に温める。
※ドライサンプ車は、オイル量の点検前にスナッピング(エンジン回転を上げる事)を行うとオイルタンクの油面が変化し、正しいオイル量の点検が出来ないので注意しましょう。車種によっては、スナッピングを行うよう指示されている場合もあるので詳細はサービスマニュアルを確認して下さい。 - 暖機運転後、アイドリングで3分間ほど放置してからエンジンを停止しましょう。
- エンジン停止直後にオイルレベルゲージを外し、車体を垂直に立て、オイルレベルゲージをねじ込まずにオイルタンクに差込、オイル量を点検しましょう。
- オイルレベルゲージの下限線と上限線の間に油面があれば良好です。もし、下限線近くや、下限線以下までオイル量が減っていたら上限線まで推奨または、指定のエンジンオイルを補給しましょう。
推奨オイルはサービスマニュアルを参照。
オイル漏れ点検
- エンジン各部やオイルパイプ、オイルホースなどからオイルが漏れていないか点検しましょう。
- オイル漏れがある場合、点検整備をしましょう。
エンジンオイルの交換(4サイクルエンジン)
4サイクルバイクのエンジンオイルは、ピストンリングを吹き抜けたガスなどにより、スラッジの混入やガソリン成分による希薄化などで、オイル性能の劣化が生じる。このため、エンジンオイルは定期的な交換が必要です。
また、新車はエンジンの各部のアタリが付いていない為、車両の使用初期段階で、オイルの中に金属粉が多く混入しましょう。
このため、エンジンオイルは新車からの初回点検時、1000km走行後のオイル交換が車の寿命に影響を及ぼします。
交換時期はサービスマニュアル参照。
※エンジンを暖機氏、オイルを軟らかくすると、オイルが抜けやすくなる。
- オイルレベルゲージまたは、フィラーキャップを外す。
- クランクケース下部についているオイルドレンボルトを外し、オイルを抜き取る。
- オイルが完全に抜けてから、洗浄したドレンボルトとシーリングワッシャーを取り付け、指定トルクで締め付ける。
※損傷しているシーリングワッシャーは交換しましょう。 - レベルゲージの取り付け穴あるいは専用オイル注油口から推奨または指定のエンジンオイルを補給しましょう。
- レベルゲージで量を計りながらゲージの上限線までオイルを入れましょう。補給後、レベルゲージを確実に締め付けましょう。
オイルクリーナーの詰まり点検
4サイクルエンジン
- ろ網式のオイルストレーナースクリーンの表面にゴミなどが付着して、オイルの流れが妨げられていないか点検。
- 必要なら清掃しましょう。
オイルストレーナースクリーンの取り外しは、サービスマニュアル参照。
2サイクル分離給油式エンジン
- オイルタンク下部にセットされているチューブクリップを緩める。
- オイルストレーナージョイントをタンクから取り外す。ストレーナースクリーンをタンクより取り外す。
- ストレーナースクリーンをエアブローして清掃を行いましょう。
- スクリーンの取り付けは取り外しの逆手順で行いましょう。
- ふき取ったエンジンオイルをタンクに注入後、オイルチューブとオイルポンプのエア抜きを必ず行いましょう。
※作業終了後、各部のオイル漏れを点検しましょう。
オイルポンプの状態(2サイクル分離給油式エンジン)
- 2サイクル分離給油のオイルポンプは、スロットルケーブルのジャンクションボックスからのオイルコントロールケーブルにより、スロットル開度とエンジン回転数に連動したオイルと出量の調整を行っています。
- オイルコントロールケーブルのインナーケーブルが伸びてくると、スロットル開度に対するオイルの吐出量が狂うため、点検する必要があります。
- オイルポンプには、コントロールアームとポンプボディなどに、合わせマークがあるので、詳細はサービスマニュアル参照。
オイルクリーナーの交換
ろ網式のオイルストレーナースクリーンでろ過されなかった微細なゴミや、金属粉はろ紙式のオイルフィルターでろ過されます。ろ紙が詰まると、オイルが十分に供給されなかったり、ゴミがリリーフ通路を通ってエンジン各部に送られるため、摺動部が摩耗してバイクの寿命を縮める事になる。
- カートリッジ式オイルフィルターはフィルターレンチで取り外します。
※マフラーなどが熱くなっている場合、手が触れて火傷しないよう注意して作業する事。 - エンジンのオイルフィルター取り付け部をウエスで清掃しましょう。
- 新しいフィルターのOリングにエンジンオイルを薄く塗布して、エンジンに取り付けます。
- フィルターレンチでオイルフィルターを締め付けます。
トルク:小型カートリッジ:1.0kg-m,大型カートリッジ:1.8kg-m - エンジンオイルを規定量注入し、エンジンを始動してオイル漏れが無いか確認しましょう。最終的に、オイルレベルゲージで量を確認・調整して下さい。
燃料装置
燃料漏れ点検
燃料系統の各部を点検しましょう。
- ガソリン漏れ
- チューブ止めクリップの外れや緩み
- ゴムチューブの劣化、損傷、いじょうのあるものは整備を行う。
燃料ホースの点検
ゴムチューブは自然に劣化する為、定期的に部品を交換しましょう。
キャブレターのリンク機構の状態点検
キャブレターにリンク機構が有るものは、スロットルやチョークを作動させ、リンクの機能に異常が無いか点検しましょう。
スロットルバルブ及びチョークバルブの状態点検
- スロットルケーブルに劣化や損傷が無いか点検しましょう。
- スロットルグリップのフランジ外周部で遊びが規定値あれば良好。
スロットルグリップの遊び量:2~6mm - 遊びの調整はスロットルグリップ側のアジャスターで行いましょう。ロックナットを緩め、アジャスターを回して、遊び調整をしましょう。
- 調整後、ロックナットを締め付けます。
- アジャスターにブーツがあるものは、確実にブーツを取り付けましょう。
- 主調整はキャブレター側で行いましょう。強制開閉式スロットルでは、引き側ケーブルのロックナットを緩め、アジャスターを回して遊びを調整しましょう。調整後、ロックナットを締め付けます。
- スロットルケーブルの途中にアジャスターが有るものは、主調整をここで行いましょう。ロックナットを緩め、アジャスターを回して、遊びを調整しましょう。調整後、ロックナットを締め付けます。
- ハンドルがどの位置でもスロットルが自動的に全閉になるか点検しましょう。
- スロットルグリップの戻りが悪い時は、スロットルケーブルへの給油、スロットルグリップハウジングの分解、給油を行いましょう。
- エンジンがアイドリングの時、ハンドルを左右一杯に切って、アイドル回転数が変化しない事を点検しましょう。もし、アイドル回転が上がる場合は、スロットルグリップの遊び、ケーブルが正しく通されているか点検しましょう。
※損傷や急な曲がりで変形したケーブルは作動不良の原因になる為、使用しない事。 - チョークレバーを作動させて、引っ掛かりなく全開、全閉できるか点検しましょう。
- チョークケーブルの損傷や変形がないか点検しましょう。
※損傷や急な曲がりで変形したケーブルは作動不良の原因になる為、使用しない事。 - ケーブル作動のマニュアルチョークはケーブルの作動を点検しましょう。
- チョークレバーがいっぱいに戻っている位置でインナーチョークケーブルの最大振幅部で1~2mmの遊びがあるか指で押して点検しましょう。
- 遊びが適正でない場合は、ケーブルクランプのスクリューをゆるめ、アウターケーブルの取り付け位置を動かしてインナーケーブルの遊びを調整しましょう。
- オートバイスターター式チョーク機構採用車は、エンジンの悪化り具合やエンジンの調子でチョークの作動を点検しましょう。
- 冷間時に始動しずらい(暖機時は良好)→スターターバルブが完全に開かない。
暖機時もエンジン回転が十分に上がらない(燃費が悪い)→スターターバルブが完全に閉じない。
上記の症状がみられる場合、チョーク機構の点検を行い、正常なら故障診断に従って他項目の整備を行いましょう。
燃料フィルターの詰まり点検
- 燃料コックをOFFにします。
- 燃料コック下部のストレーナーカップを外します。
- Oリング、ストレーナースクリーン、を燃料コックボディから取り外します。
- ストレーナーカップ、スクリーンを灯油で洗浄し、ゴミや水分を取り除きます。
- スクリーンをボディに取り付け、新品のOリングとストレーナーカップを取り付けます。
※ストレーナーカップは破損し易いので締め付け過ぎないよう注意して下さい。 - 燃料コックをONにして燃料漏れが無いか点検します。
冷却装置
エンジンが熱い時(100℃以上あると思われるとき)にラジエターキャップを開けると、冷却系統の圧力が低下し、急激に冷却水が沸騰する事があるので、冷却水の温度が下がってからキャップを開けて下さい。
冷却水は毒性が有るので、引用したり、皮膚・目に付着させない事。皮膚や衣類に付着した場合は、石鹸で洗い落とす。目に入った場合は、水で十分に洗い流し、専門医の診察を受ける。飲んだ場合は直ちに嘔吐させ、専門医の治療を受ける。冷却水は子供の手の届かない安全な場所に保管しましょう。
水量点検
冷却水は自然に蒸発するので、液量が減少するので、定期的に液量の点検を行いましょう。
注意事項
- 冷却水は、防錆・不凍の機能を持っている。水道水の使用はエンジン内にサビが発生したり、寒冷時に凍結してエンジンが破損する場合があるので、必ず冷却水を使用する事。
- 液量点検は、リザーブタンク側で行う。ラジエター側では行わない事。
- 点検は車体を垂直にして行う。車体が傾いていると液量が正しく点検できない。
- エンジンを暖機運転後、点検する。
- リザーバータンクの液面がタンク上限線(UPPER)と下限線(LOWER)の間にあるか点検しましょう。
- 液面が下限線以下の場合は、冷却液(補充液または原液を薄めて作ります)を上限線まで補充します。
標準濃度:30%(使用地域により、濃度を変えましょう。) - 液量の減少が著しい場合、冷却水の漏れがないか点検しましょう。リザーバータンクに冷却水が完全になくなっていた場合、冷却系に空気が混入している可能性がある為、冷却系統のエア抜きを行いましょう。
水漏れ点検
- フェアリング、燃料タンクを取り外し、ウォーターポンプ、ウォーターホースや各接続部から冷却水が漏れていないか点検しましょう。
- 水漏れがある場合は分解整備を行いましょう。
- ウォーターホースの劣化、損傷を点検しましょう。ゴムホースは熱や経年変化などにより、自然劣化を起こし、劣化が進行すると冷却系統に圧力が加わった時にホースが破裂する事があります。ホースを指でつまんで、大きなひび割れが無いか点検しましょう。
ラジエターキャップの機能点検
ラジエターキャップは冷却系統内の圧力を調整するためのリリーフバルブが取り付けられています。このリリーフバルブが故障すると、オーバーヒートや冷却液漏れなどが発生する為、ラジエターキャップの開弁圧力を点検しましょう。
冷却水の交換
冷却水は使用過程で錆の堆積、混合比の変化など、冷却液としての性能が劣化する為、定期的に交換しましょう。
交換時期はサービスマニュアル参照。主に4年。
保安装置
灯火装置及び方向指示器点検
電気装置の作用を点検しましょう。
- ヘッドライトの作用→光軸の調整具合、ライト内の反射板の汚れ、破損、Hi,Loビームの切り替え(光軸調整は下記の「ヘッドライトの光軸点検」を参考にする)
- メーター照明ライト→作用
- ポジションライト→作用、ポジション、テールライトの点灯具合、破損
- 方向指示器(ウインカー)およびパイロットランプ→作用、点滅回数(60~120/分)、ライト内の反射板の汚れ、破損
ヘッドライトの光軸点検
- 垂直方向の調整は、ヘッドライトマウントボルトをゆるめ、ヘッドライトを上下に動かして、ブラケットとケースのポンチマークを合わせます。
- 車種によっては、ヘッドライト下部にアジャストスクリューがある場合は、このスクリューを回して垂直方向の調整を行いましょう。
- ヘッドライトリムの横方向にアジャストスクリューが有るものは、このスクリューをまわして、水平方向の調整を行いましょう。
- ヘッドライトが一体のケースに入っている場合は、光軸調整ノブがケース裏側にあるまたはケーブルによるリモート調整式になっているものがあります。この方式の調整要領は、サービスマニュアル参照。
ストップライトの点検
- ストップライトの作用、ライト内の反射板の汚れ、破損を点検しましょう。
- フロントとリアブレーキのペダルまたはレバーを操作し、ブレーキが効く少し前にストップライトが点灯するか確認し、不具合の有るものは調整しましょう。
- レバー側のストップライトスイッチは調整できません。点灯時期が不良の場合はスイッチとその関連部品を交換しましょう。
- 調整はブレーキペダルの高さ、遊びの調整後に行いましょう。
- ブレーキペダル付近にあるストップライトスイッチのアジャストナットを回し、点火時期を調整しましょう。
※調整時に、スイッチ本体側を回すと、スイッチの内部で断線する事があります。必ずスイッチを押さえナットを回して下さい。 - 調整後、点灯時期を確認しましょう。
警音器及び施錠装置点検
- ホーンの作用の点検を行いましょう。
- バッテリーレス仕様のバイクでは、エンジンを掛けてホーンの作用を点検しましょう。
- ハンドルを右または左に切ってステアリングロックの作用を点検しましょう。
- ステアリングロックピンとストッパーに損傷が無いか点検しましょう。
- 作用に不具合の有るものは点検整備を行いましょう。
計器点検
スピードメーター、タコメーターなどのメーター類の作用が正常か点検しましょう。
- メーターの指針の異常な振れ
- メーターレンズの曇り、劣化。
エキゾーストパイプ及びマフラー点検
- マフラーの取り付けやジョイント部のボルト、ナット類のゆるみがないか点検し、緩みのあるものは増し締めしましょう。
- マフラーブラケットに亀裂、損傷がないか点検しましょう。
- マフラーの接合部からの排気漏れがないか点検しましょう。排気漏れのあるものは、パッキン、ガスケットなどを交換しましょう。
- マフラーの腐食による排気漏れがないかも点検し、腐食の有るマフラーは交換するか、排気漏れシートを使用して補修すると良いでしょう。
車枠及び車体点検
車体の各ボルト、ナットのゆるみや、割りピンなどの緩み止めの脱落などがないか点検しm不具合のあるものは増し締めなどを行いましょう。
その他
シャシー各部の給油脂状態点検
車体各部の可動部が滑らかに作動するか、給油キレが無いか点検しましょう。給油箇所はサービスマニュアル参照。
コントロールケーブルの給油点検
ケーブルはインナーケーブルとアウターケーブルによって構成され、力を伝達する部品です。インナーとアウターケーブルに水が浸入して錆が発生するとインナーとアウターケーブルの摩擦が大きくなり、効率よく力を伝達できなくなり、レバーやペダルなどの作動が重くなったり戻りが悪くなります。
- 作動の重いケーブルは、インナーとアウターケーブルの間にオイルを給油する事である程度は機能を回復する事ができ、錆を防ぐことにもなります。
- ケーブルを外します。
- 市販のケーブルインジェクターを使うか、ケーブル端にビニールなどを巻いてオイルを重力で浸透させる。充分オイルが浸透したら、余分なオイルは拭き取り、ケーブルエンドにグリスを塗布してケーブルを取り付けます。
- ケーブルの取り付け後は、遊び調整を行いましょう。
注意事項
- ケーブルはある程度の弾力性があるが、捩じったり、きつい曲げを与えると部分的に変形し、元に戻らなくなります。この状態ではインナーとアウターの摩擦が多くなり、作動不良の原因となる為、部分的な変形のあるケーブルは使用しないで下さい。
- ケーブルで部品をぶら下げたりしても部分的な変形をケーブルに与える事があるので注意して下さい。
- アウターケーブルの端に水やごみの侵入を防ぐダストカバーの付いている場合は、必ずカバーを確実にセットしましょう。ダストカバーの取り付けが不十分だと、水の侵入により、サビが発生し、ケーブルの作動不良の原因になります。
サイドスタンドの点検
サイドスタンドラバー付きのバイクは、ラバーの摩耗点検をしましょう。使用限界線まで摩耗したものは新品に交換しましょう。
- 車体を垂直にして支え、メインスタンド付きのバイクはメインスタンドを掛けます。
- サイドスタンドラバー先端にばねばかりをかけ、スタンドが動き始める時の荷重を点検しましょう。
サイドスタンドの収納荷重:2~3kg , 3~5km(オン、オフロードバイク) - 軽く動きすぎる時は、ピボットボルトを増し締めして再点検し、まだ既定の収納荷重が得られない場合は、リターンスプリングを交換しましょう。
- サイドスタンドが滑らかに動いて、収納されるか点検しましょう。滑らかに動かない場合は、ピボット部にグリスを塗布しましょう。
- スタンドの横方向のガタを点検し、ガタが大きい場合は、ピボットボルトを増し締めしましょう。再点検し、ガタが大きい場合は関連部品を交換しましょう。
サイドスタンドスイッチの作用点検
- サイドスタンドを作動させて、サイドスタンドスイッチの作用を点検しましょう。
- トランスミッションをニュートラルにし、サイドスタンドを格納した位置でエンジンを始動しましょう。
- クラッチレバーを握り、ギアを入れた状態でサイドスタンドを下げ、駐車位置でエンジンが停止することを確認しましょう。
- エンジンが停止しない場合は、サイドスタンドスイッチの点検を行いましょう。サイドスタンドスイッチの取り付けにゆるみがないか、スイッチ全体に損傷が無いか点検しましょう。
※サイドスタンドスイッチが装備されていない車両は、点検する必要はありません。また、ギアを入れた状態でサイドスタンドを下げてもエンジンは停止しません。
燃焼室、排気ポートのカーボン除去
2サイクルエンジン
2サイクルエンジンではエンジンオイルを燃焼させる為、エンジン内のカーボン堆積が4サイクルエンジンより多くなります。このまま放置しておくと、カーボンの体積が過多となり、燃焼室やピストンヘッドのカーボンはホットスポットとなって、プレイグニッション(早期自己着火現象)によるノッキングが発生したりして、エンジンに悪影響を与えます。
また、排気ポートに堆積したカーボンは排気の流れを妨げ、エンジン出力の低下の原因となるため、定期的なカーボン除去が必要となります。
※カーボンの除去は燃焼室、ピストンやシリンダーなどに傷を付けないよう、注意して作業しましょう。
- シリンダヘッド及びシリンダーの脱着は各サービスマニュアルを参照して下さい。
- シリンダヘッドを外し、ピストンが上死点の位置でピストンヘッドのカーボンを除去しましょう。
- シリンダヘッドの燃焼室のカーボンを除去しましょう。
- シリンダを取り外し、排気ポート壁に堆積したカーボンを除去しましょう。
- シリンダーに残ったカーボンのかすを清掃しましょう。
- 水冷エンジンのシリンダーはウォータージャケット内にカーボンが残らないようにエアブローで清掃しましょう。
クランクケースブリーザーの清掃点検
4サイクルエンジンの一部車種はクランクケースブリーザー機構を採用している場合がある。これは、クランクケース内の内圧を抜くブリーザーチューブをエアクリーナーに導き、ピストンから吹き抜けた未燃焼ガスを再循環させて燃焼させています。
また、同時にブリーザーチューブからは蒸発した水分やミスト上の油分が排出されます。これらはセパレーターで分離されて水分や油分はドレンチューブ内に溜まる為、時々ドレンプラグを外して排出する事が必要となります。車種によっては、ドレンチューブの一部が透明になっており、この部分で堆積状態が確認できます。
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