バイクのチェーン張り調整方法
チェーンの張り調整の推奨は1,000km毎なので、チェーンの清掃・注油メンテナンスの2回に1回チェーンの張り調整を行いましょう。
チェーンの張り調整後は、スイングアーム両端のチェーンアジャスターの目盛りを必ず合わせましょう。
今回はチェーンの張り・アライメント調整方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 交換時期: 1,000~2,000km
- 時間: 約5分
- 費用: 0円~約12,000円
- リアスタンド:約12,000円
- ショップ工賃: 約500円
- 難易度: ★★☆☆☆
作業手順
チェーンの張り調整方法
リアスタンドを使用しスタンドアップしましょう。
詳しくは、メンテナンススタンドの使い方をご覧下さい。
スピンナハンドルを使いアクスルナットを手で動く程度まで緩めましょう。
アクスルシャフトではなくアクスルナット側を緩めましょう。
チェーンアジャスターを調整していきます。
チェーンアジャスターはスイングアームの両端に取り付けられています。
チェーンアジャスターの固定ナットを緩めましょう。
反対側も同様にチェーンアジャスターの固定ナットを緩めましょう。
チェーンアジャスターが緩まない場合
チェーンアジャスターのねじ山に汚れが付着していると緩みません。
パーツクリーナーで大体汚れを落としてから浸透潤滑剤を吹き付けてから緩めましょう。
ホイールを取り外した後にチェーンアジャスターを取り外してタップ・ダイスを立てて汚れを除去すると良いでしょう。
ねじ山が切れた、もしくは錆で状態が悪い場合は交換しましょう。
チェーンアジャスターの種類
主に上記画像4タイプのチェーンアジャスターがあります。
種類は異なりますが行う作業は同じです。
ホイール両端アジャスター(この場合ボルト)を時計・反時計回りに回して調整し、チェーンの張りを調整しましょう。
チェーンの張りの計測は、フロントスプロケット~リアスプロケットの大体中間位置を目安に行い、遊びはサービスマニュアルの指定数値に設定しましょう。
CBR400RRの場合チェーンの遊び範囲は15~20mmなので、その範囲内に収まるように調整します。
今回、チェーンスライダーに当たる音が気になるので遊びは最小に設定しましたが、チェーンの遊びを最小未満には設定しないで下さい。走行中にチェーンが突っ張りリアサスペンションが機能しなくなる事で路面とタイヤが追従しなくなり転倒する危険性があります。
左右スイングアームのチェーンアジャスターの目盛りを同一に合わせましょう。
上記左画像を拡大してご覧頂くと、スイングアーム上下に打刻されているマークの位置が若干ずれている事がお分かり頂けると思います。
打刻ミスなのかは分かりませんが、調整する際は下なら下、上なら上の打刻で左右のスイングアームの目盛りを合わせましょう。
例えば車体左側のスイングアームを上の打刻で合わせ、車体右側のスイングアームを下の打刻で合わせるとチェーンアライメントがずれてしまう場合があるので注意しましょう。
チェーンアジャスター調整で守る2つのこと
- チェーンの張りは、サービスマニュアルの指定数値内に調整する。
- 左右スイングアームの打刻を上、もしくは下で統一してチェーンアジャスターの目盛りを同一に調整する。
より正確に合わせる場合はノギスを使用して調整すると良いでしょう。
チェーンアジャスターの仕組み
ボルトは、チェーンの張りを調整する役割があります。
ボルトの出量を多くすることでアクスルシャフトを押し出します。
アクスルシャフトが押し出れば、ホイールは車体後方に下がります。
車体後方に下がると、チェーンは張るという仕組みです。
目盛りは、アライメント調整をする役割があります。
ホイール両端の目盛りが同一でなければ、ホイールは斜めを向き走行することになります。
すると、前後スプロケット偏摩耗・タイヤ偏摩耗・ホイールカラー編摩耗・ダストシール編摩耗・転倒などの原因になります。
ドライブチェーン下側を持ち上げアクスルナットを指定トルクで締め付けましょう。
チェーンを持ち上げることでチェーンは張り、ホイールを前方に押し付けて締め付ける事が出来ます。
チェーンを張らなければホイールアライメントがずれる場合があるので必ず張って締め付けましょう。
トルクレンチは持ち手の中心線を垂直に力を掛けて1回目のカチで締め付けは終了となります。
詳しくは、トルクレンチの使い方をご覧ください。
アクスルナットをトルク管理した後は再度チェーンアジャスターの目盛りが左右同じか確認しましょう。
目盛りが異なる場合はアクスルナットを緩めて再度調整して下さい。
アライメントは非常に重要なので妥協せず調整して下さい。
リアスタンドを下げましょう。
ハンドルを左に切りサイドスタンドを掛けた事を確認して取り外しましょう。
詳しくは、メンテナンススタンドの使い方をご覧ください。
まとめ
- チェーンの張り調整時(アライメント調整)は、サービスマニュアルの数値内に調整する。
- チェーンの張り調整時(アライメント調整)は、両端チェーンアジャスターの目盛りを同一に調整する。
- アクスルナット締め付け時、チェーン下側を持ち上げながらアクスルナットを指定トルクで締め付ける。
Q&A
- センタースタンドがあるのですが、リアスタンドが無くてもセンタースタンドで作業できますか?
- リアタイヤが浮けば作業は出来ます。センタースタンドで作業する場合には、フロントブレーキレバーを輪ゴム等で掛けてセンタースタンドが誤って払われないようにしておきましょう。
始めにリアタイヤ接地状態でアクスルナットを緩めましょう。
- リアタイヤが浮けば作業は出来ます。センタースタンドで作業する場合には、フロントブレーキレバーを輪ゴム等で掛けてセンタースタンドが誤って払われないようにしておきましょう。
- 走行中にふらつきが発生する。
- チェーンアジャスターの目盛りはスイングアーム左右の目盛りが同じか確認しましょう。目盛りが同じでない場合、再度チェーンアジャスター調整を行いましょう。ドライブチェーン下側を持ち上げながらアクスルナットをトルク管理した後、左右の目盛りが同じか確認して下さい。
- タイヤの空気圧は適正か確認しましょう。空気圧が低いとふらつきが発生します。タイヤ空気圧の調整は、通常タイヤ接地状態で行います。詳しくは、タイヤ空気圧調整方法をご覧ください。
- 走りがギクシャクする。
- チェーンかスプロケットが摩耗している可能性があります。リアスタンドを掛けてホイールを回転させてチェーン全周のたるみ幅を複数個所確認しましょう。噛み合わせが合わないと、チェーンがスプロケットに乗り上げて一部箇所のチェーンのたるみが均一ではなくなります。対処方法はチェーン、もしくはスプロケットを新品交換すると改善します。
- アクスルナットは100N-m近いトルクで締め付けられているのですが、3/8スピンナハンドルで外して工具は壊れませんか?
- バイク整備であれば3/8スピンナハンドルで特に破損の問題は無いでしょう。
JIS規格で作られている工具であれば、その2倍の200N-m位まで耐えうる事が出来ます。
ただ、100N-m付近を超えるとスピンナハンドルの先端部分がしなる感覚が製品によってあるのでお持ちであれば1/2スピンナハンドルの使用をお勧めします。JIS規格に順じて作られたスピンナハンドルの保証トルク値は、以下の通りです。スピンナハンドル保証トルク値 9.5sq(3/8)スピンナハンドル 202N・m(20.59kgf・m) 12.7sq(1/2)スピンナハンドル 490N・m(49.96kgf・m) ※kg・mの表記は小数第三位切り捨て
例:CBR400RRの最も締め付けトルクが高い箇所(ステアリングステムナット): 103N
KTC3/8ロングスピンナハンドル購入はこちら
KTC1/2スピンナハンドル購入はこちら
KTC変換ソケット購入はこちらTONE3/8ロングスピンナハンドル購入はこちら
TONE1/2スピンナハンドル購入はこちら
TONE変換ソケット購入はこちら※KTC・TONE製品ともに3/8と1/2スピンナハンドルの長さは同一(400mm)です。
※1/2スピンナハンドルで3/8ソケットを使用する場合、変換ソケットが必要です。
- バイク整備であれば3/8スピンナハンドルで特に破損の問題は無いでしょう。
- リアホイールを取り付ける時、ホイールカラーが落ちて難儀します。なにかよい方法は無いでしょうか?
- ダストシール溝とホイールカラーに万能グリスを塗布されましたか?万能グリスを塗布すればグリスで脱落しにくいので容易には落ちないかと思います。
あとは周りのパーツに当たらないようにつま先で微調整しながら行うと取り付けし易いです。
- ダストシール溝とホイールカラーに万能グリスを塗布されましたか?万能グリスを塗布すればグリスで脱落しにくいので容易には落ちないかと思います。
- アクスルナットを締め付けるとき、チェーンを引っ張るよりタイヤを前方を押す方が良いのではないでしょうか?
- おっしゃる通りタイヤを前方へ押す方が車体右側も確実に密着できるので良いかもしれません。
チェーンを引っ張る方法はHONDA推奨の方法なのでそちらを記載させて頂きました。
- おっしゃる通りタイヤを前方へ押す方が車体右側も確実に密着できるので良いかもしれません。
- チェーンアジャスターが固着しているようで緩まないのですがどうすれば良いでしょうか?スパナで緩めるんですよね?
- チェーンアジャスターのねじ山に汚れが付着していると緩まないので、パーツクリーナーで大体汚れを落としてから浸透潤滑剤を吹き付けてから緩めましょう。
上記のようなチェーンアジャスターの場合は、スパナしか工具が入らないのでスパナで緩めます。強いトルクで締め付けられているわけではありませんので本来すぐに緩みます。
取り外し後は、ホイールを取り外した後にチェーンアジャスターを取り外してタップ・ダイスを立てて汚れを除去すると良いでしょう。
ねじ山が切れた、もしくは錆で状態が悪い場合は交換しましょう。
もし錆まみれの場合でしたら、真鍮ブラシとパーツクリーナーで錆を落とした後に浸透潤滑剤を塗布してからスパナで反時計回りに回して緩めましょう。固着によりネジが切れるかもしれませんが交換前提で作業を行って下さい。
- チェーンアジャスターのねじ山に汚れが付着していると緩まないので、パーツクリーナーで大体汚れを落としてから浸透潤滑剤を吹き付けてから緩めましょう。
ホイール簡単用語解説
- ホイールカラー:ホイールとフロントフォーク・スイングアームの間に取り付け隙間を埋める役割
- アクスルシャフト:ホイールを保持する役割
- ダストシール:異物と雨水をホイール内部への侵入を防ぐ役割。雨水はグリスによって侵入を阻止している
- ハブダンパー:ホイールとドリブンフランジ間に配置されている動力の衝撃してホイールへ伝えるパーツ
- ドリブンフランジ:スプロケットとホイールを繋ぐパーツ
- スピードギアボックス:スピードメーターのスピードを計測するパーツ
- チェーンアジャスター:ドライブチェーンの張り調整を行う調整器
- チェーンスライダー:サスペンションが上下した際、フレームへの干渉を防ぐパーツ
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