ネジロック剤の使い方
バイクには、ねじの脱落を防ぐ目的でネジロック剤と呼ばれるネジの接着剤が塗布されている箇所があります。
バイクでは主に以下の箇所です。
- ブレーキディスク
- キーシリンダー
- ブレーキキャリパー
- フロントフォークソケットボルト
- ステータコイル
- バーエンド
- フロントスプロケット等
ネジロック剤はネジ先端に少量塗布するだけで効力を発揮します。
外す際はネジロック剤の効力を落とすはんだごて等の熱を使いショックドライバーを使用すると良いでしょう。
今回はネジロック剤の使い方(塗布方法と外し方)について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 時間: 約10分(取り付け・取り外し各5分)
- 費用: 0円~約700円
- ネジロック剤:700円
- ショップ工賃: 約1,000円
- 難易度: ★☆☆☆☆
作業手順
1.ネジロック剤の塗布方法
ネジロック剤の容器のキャップを開けましょう。
ネジロック剤の容器の先端に付属の針を刺して硬化したネジロック剤を除去しましょう。
ねじ山の先端にネジロック剤を少量塗布しましょう。
画像のように縦に少量のみの塗布で締め付けた際にねじ山を伝い広がって効力を発揮します。
ネジロック剤を塗布したら直ぐにねじを指定トルクで締め付けましょう。
ロックタイト243(中強度)の場合、ネジロック剤の硬化が完了する時間は約20分です。
硬化する前にトルク管理を行いましょう。
ネジロック剤の容器はキャップを締めて保管しましょう。
キャップを締めずに放置すると内部の溶液が硬化して再使用出来なくなる製品もあるようなので、使用後は逐一キャップを締めるように心がけましょう。
2.ネジロック剤の外し方
取り外すボルトをはんだごてで熱を加えてネジロック剤の効力を弱めましょう。
六角穴付き頭の場合は、ショックドライバーで緩めましょう。
六角頭の場合は、六角ソケットにスピンナハンドルで緩めましょう。
- 六角穴付きボルト:ショックドライバー+はんだごて
- トルクスボルト:ショックドライバー+はんだごて
- プラスネジ・マイナスネジ:ショックドライバー+はんだごて
- 六角ボルト:スピンナハンドル+はんだごて
ショックドライバーは緩める方向にテンションを掛けながら勢いよくショックドライバーの頭を水平にハンマーで叩きましょう。
詳しくは、ショックドライバーの使い方をご覧下さい。
まとめ
- ネジロック剤塗布時、ネジ先端に少量塗布する。
- ネジロック剤塗布後、ネジロック剤が硬化する前にトルク管理を行う。
- ネジロック剤塗布後、使い終わったらネジロック剤容器のキャップを締めて保管。
- ネジロック剤が塗布されたネジの取り外しは、はんだごてを使用して効力を弱めてから各推奨工具を使用してネジを緩める。
- 六角ボルト:スピンナハンドル
- 六角穴付きボルト:ショックドライバー
- トルクスボルト:ショックドライバー
- プラスネジ・マイナスネジ:ショックドライバー
Q&A
- ネジロック剤が塗布されたねじを取り外し時にナメてしまった
- プラス・マイナスねじの場合:貫通ドライバーやショックドライバーのビットを使用してネジ頭を形成します。この際、ネジ頭をしっかり形成して下さい。中途半端な状態でネジ頭を形成してのショックドライバーの使用は、更にネジ頭をナメる可能性があります。ネジ頭形成後、再度ショックドライバーを使用し取り外してください。
- 六角穴付きボルトの場合:ボルト頭の汚れを除去した後再度ショックドライバーを使用してみて下さい。無理な場合、バイスでボルト頭を挟み取り外してみて下さい。他には、お勧めはしませんがトルクスビットを使用する方法もあります。六角穴付きにトルクスビットを使用する事で、トルクスの各頂点がナメかかった角に喰い込み回る場合がありますがビットが破損する可能性もありますので自己責任でお願いします。最終手段は、ボルト中心にドリルで穴を開けた後エキストラクター(逆タップ)を使用して救出します。救出出来なかった場合、ボルトごとドリルで削り、リコイルと呼ばれる方法で新たにメネジを形成します。但し、ディスクブレーキ等の部分は肉厚が少なくリコイルを施すと強度が不足する可能性があるので注意が必要です。バイクショップにて依頼するのがお勧めです。
- トルクスボルトの場合:六角穴付きボルトに同じ。
- 冒頭でネジロック剤を塗布する箇所の記載がありますが、必ず塗布するものなのでしょうか?
- サービスマニュアルに記載されている場合は必ず塗布します。冒頭で記載したのは例なので塗布が記載されていない場合は必要ありません。
- ネジロック剤の針を無くしてしまったのですが、代わりに開けるものはありますか?
- 裁縫用の針を代用すると良いでしょう。キャップも無いようならプラリペアでキャップを作るのも良いかもしれません。
- 画像ではねじ山以外にもボルトの先端に塗布していますが先端に塗布する必要はあるんですか?
- 特に必要はありません。
- はんだごてでネジロック剤の効力を落とす温度に達するのでしょうか?
- はんだごてでネジロック剤の効力を落とす温度まで達します。
バイクに使われているネジロック剤は中強度が大半で中強度の効力を失う温度は約150度~200度です。
対して、熱を発生させる工具は以下の通りです。- ガスバーナー:約1300度
- はんだごて:約500度
- ヒートガン:約500度
ネジロック剤の効力を十分落とす温度なので、どの工具を使用しても効力は弱まります。
バーナーの使用は、ブレーキディスクのみに使用出来ますが火に弱いマグネシウムホイールへの使用は変質の恐れがあるので厳禁です。
極力バーナーは使用せずはんだごてを使用する事をお勧めします。
また、エアーインパクトや電動インパクトの使用もお勧めです。
エアー・電動インパクトは横方向にに対してのみ力が加わる特徴があります。対して、ショックドライバーは横方向と縦方向に力が加わる為ナメにくく取り外しやすくなるので、極力ショックドライバーを使用しましょう。
- はんだごてでネジロック剤の効力を落とす温度まで達します。
- 六角穴付き頭と六角頭とはどう違うのでしょうか?
- ネジロック剤のボルトを取り外す時に記事内ではんだごてで効力を落としていますが、必ず使う必要はあるのでしょうか?いつもスピンナハンドルで緩めていました。
- 普通に緩めば問題ないのですが、ナメてからだと逆タップ作業の難易度が高くなりバイクショップに依頼すると費用も高くなります。場所によっては引き受けてくれないショップもあると聞きます。
なので、少しでも外す確率を上げて頂くために熱を加えて頂く事をお勧めします。
- 普通に緩めば問題ないのですが、ナメてからだと逆タップ作業の難易度が高くなりバイクショップに依頼すると費用も高くなります。場所によっては引き受けてくれないショップもあると聞きます。
ディスカッション
コメント一覧
ねじロック剤は、ねじを締め付ける前に塗布することが常識でしょうか?
締め付けた後に塗布しても効果ありませんか?
栗原様
ご質問ありがとうございます。
以下、ご回答致しますので参考になれば幸いです。
ネジロック剤は、締め付ける前にねじ山に塗布します。締め付けた後には塗布は出来ないかと思います。
ネジロック剤は嫌気性の製品が一般的かと思います。嫌気性とは、空気を遮断する事で硬化するタイプです。金属に接触している事が硬化する条件のタイプもあります。(スリーボンドのネジロック剤)
なので、外部から塗布しても硬化しない可能性が有ります。
何か、外部から塗布しなければならない理由があれば再度ご質問下さい。
ご参考になれば幸いです。宜しくお願い致します。