[4サイクルエンジンの潤滑方式]ウェットサンプとドライサンプ
目次
ウェットサンプ式エンジン
ウェットサンプ式は、オイル溜まりがクランクケース内にある構造を言います。
大半の4サイクルエンジンはこのウェットサンプです。
クランクケースには、オイル溜まりから清浄なオイルを取るオイルストレーナーからオイルを吸い上げ、オイル穴を通り、クランクシャフトやミッション等の潤滑が必要な箇所にオイルを圧送して潤滑を行います。
潤滑したオイルは、重力で落下し再びオイル溜まりに落ちて来ます。
このサイクルを繰り返す事を圧送式潤滑と言います。
オイルの圧を調整するオイルプレッシャリリーフバルブというパーツが装着されている車種もあります。
また、皆さんご存知オイルフィルターは、取り付けられていない車種もあり、この場合オイルストレーナーのみで汚れを除去しています。
オイルストレーナー
こちらが清浄なオイルを吸い上げる役割をもつ、オイルストレーナーです。
画像を拡大すると網が貼られているのがお分かりいただけると思います。
エンジンオイルを交換していないと、ここにヘドロ等の汚れが付着しており吸いずらい状態になっていきます。
オイルストレーナーからオイルを吸い上げるので、ヘドロがあれば吸いずらいのは容易に想像できるでしょう。もし、オイルが供給出来なければ油膜が切れて金属同士が擦れ合う事で、最終的に焼き付いてしまいます。
エンジンオイル交換は重要です。
清浄効果に優れているオイルを入れると、エンジン内が綺麗になっていきます。
エンジンを傷つけない、高品質のフラッシングオイルもエンジンを綺麗にするには有効です。
オイルプレッシャリリーフバルブ
オイル圧を調整する役割をもつ、オイルプレッシャリリーフバルブです。
必要潤滑油量よりオイルポンプの吐出量が多い場合、油圧が高くなるのでオイルプレッシャリリーフバルブでオイルをオイルパンへ戻します。
構造は単純で、ラジエーターキャップのようにスプリングの力でバルブを押さえて、スプリングの設定された圧力以上掛かった場合にバルブが開き開放する仕組みです。
メリット
- コストが安い。
- ドライサンプに比べ、構造が単純。
- ドライサンプに比べ、オイル漏れの確率が下がる。
デメリット
- オイルパンの容量が大きくなる分、エンジンレイアウトは高くなる。
飛沫式潤滑
飛沫(ひまつ)式潤滑とは、オイルを掻き上げて潤滑が必要な箇所にふりかける事で潤滑する方式です。
現在は、上記で記載したオイル穴をオイルが圧送して潤滑する圧送式潤滑が4サイクルエンジンの潤滑方式の主流です。
ドライサンプ式エンジン
ドライサンプ式は、オイル溜まりがエンジン外部のオイルタンクにあります。
ウェット散布はエンジンのクランクケース内でしたので、エンジン内になるか、エンジン外にあるかがウェットサンプとドライサンプとの大きな違いになります。
ドライサンプ式は、オイルをエンジン外部に取り付けられたオイルタンクに溜めておきます。
オイルタンクからエンジン各部へオイルを圧送するオイルポンプと、重力で下がってオイルパンに溜まったオイルをオイルタンクに返送するオイルポンプと2つ必要になります。
つまり、オイルタンクから行き・帰りのポンプが必要になるという事です。
そこで、オイルポンプに圧送用・返送用の2つのローター(2連ローター)の構造のオイルポンプを使用してドライサンプ式を実現しています。
車種によっては、オイルタンクをフレーム内の空洞を利用している場合もあります。
因みに、バイクの場合、マシンを傾けて曲がるのでオイルパンは斜めになり、旋回Gによりオイルもエンジン中心に是正されるので、ストレーナーから吸える位置にあるようになります。
なので、ドライサンプの場合メーカーはエンジンレイアウト目的、オイルの冷却目的、もしくはドライサンプという通常の潤滑装置とは違う特別感を演出したい等で採用していると考えられます。
メリット
- オイルパンの容量を少なくできる為、エンジンレイアウトを低く配置する事が可能。
- オイルタンクにオイルを溜めて置くので、高い旋回Gを受けてもオイル圧を安定して各部に供給できる。
- オイルラインの途中にオイルクーラーを追加する事が容易なので、オイル冷却もウェットサンプに比べて有利。
- ウェットサンプに比べて、オイル量を少なくできる。
デメリット
- 部品点数が増し、コストが高くなる。
- ドライサンプシステムからのオイル漏れの可能性があり、ウェットサンプに比べてオイル漏れの確率が高まる。
小ネタ
昔、F1マシンがエンジンが焼き付くという事態が発生したそうです。オイル量も問題無なく何が原因かは分からなかったそう。
暫くしてから、焼付く原因がコーナー時の3Gに達する凄まじい旋回Gにより、オイルパンに溜まっているオイルが一時的に片側に寄ってしまう事でオイルを吸い圧送する事が原因と分かったそう。
そこで、オイルを溜めて置く場所をクランクケース内部から、別の容器に入れて、そこから供給すればよいのでは?とのことで、ドライサンプが生まれたそうです。
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