カーボンの蓄積箇所と対策方法

2020年7月18日サブ整備記事,サブ整備記事,エンジン系,吸気&排気系

「エンジン内にカーボンが溜まるから定期的にエンジンを高回転まで回した方が良い」
と、一度は聞いた事があるのではないでしょうか。
エンジンが温まるまで走行し、定期的に高回転まで回し、年1回で良いので燃料添加剤を使用すると良いコンディションに保てます。

今回は、カーボンの蓄積箇所と対策方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。

目次

カーボンの蓄積箇所

マフラーのカーボン

マフラーのカーボン

マフラー入口にカーボンが溜まります。
特に2サイクルエンジンは溜まりやすいです。

画像のマフラーは、HONDAのスーパーカブです。畑やコンビニに行く等の「チョイ乗り」の走り方は、エンジンにとってシビアコンディションとされており、長時間走行するよりエンジンにカーボンが蓄積されます。

理由は、エンジンの温度が上がりきらない為です。
ガソリン(HC)と酸素(O2)を混ぜて燃やすと、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。しかし、エンジンの温度が低いと酸素と炭素が上手く結びつかず二酸化炭素にならずカーボン(炭素)になってしまいます。
カーボンの蓄積を遅らせるには、エンジンを高温状態にする為に10分以上の走行や、定期的に高回転まで回す事が重要です。

吸気・排気バルブ

バルブのカーボン

吸気・排気バルブの傘にカーボンが蓄積されます。
画像は、排気バルブですが吸気バルブの方がカーボンが蓄積しやすい傾向にあり、吸気バルブには画像の2倍以上のカーボンが蓄積していました。走行距離は約5万km。

画像を拡大してバルブフェースをよく見ると、虫食いのように、小さい段がついているのがお分かりになると思います。これらは、バルブが閉まる際にカーボンを噛んでバルブに小さな穴が開いた状態。
虫食いが多くなると、燃焼室内で混合気が密閉出来ずに圧縮が漏れてしまいます。
特に低回転時のトルクに大きく影響を及ぼし、擦り合わせしたバルブを組み付けるとクラッチを繋いだ瞬間、如何に影響を及ぼしていたのかが分かります。

吸気・排気ポート

排気ポートのカーボン

吸気・排気ポート内にカーボンが蓄積されます。

画像は排気ポートです。カーボンが排気ポート上側に多く付着しているのが確認できます。
ポートにカーボンが蓄積していくと、ポートの大きさも小さくなっていき、カーボンによりスムーズに排気できなくなります。

吸気側は、燃焼室に直接燃料を吹く直噴エンジンではない限り、燃料もポートを通ります。
その際にカーボンがあると、カーボンに燃料が付着してコンピュータの送りたい量の燃料の数%かはこのカーボンに付着してスムーズに燃焼室に入っていかず、パワーが出ない理由の1つと考えます。

ピストンヘッド

ピストンヘッドとは、画像のようなピストン頭部を指します。

ピストンヘッド カーボン
http://www.geocities.jp/sl230mijuku/oh.html

ピストンヘッド(頭部)にカーボンが蓄積されます。

4サイクルエンジンの場合、ピストンヘッドにバルブの逃げ(バルブリセス)があり、堆積し易い傾向にあります。
燃焼室にカーボンが溜まると、カーボンに熱が溜まり混合気がスパークプラグからの着火ではなく自然発火してしまう場合があります。圧縮工程でピストンが上昇している最中に自然発火すると、エンジン内に衝撃波が走る事でエンジン不調になる場合があります。

2サイクルエンジンの場合カーボンが溜まりやすいので、定期的にシリンダヘッドを分解してピストンヘッドのカーボンをスクレーパーで落とすのが望ましいです。

チョイ乗りを続けると

エンジン内に大量のカーボンが蓄積して、エンジンの吹け上がりが鈍くなりパワーが出なくります。最悪、エンジン始動が困難な状態になります。
通勤・通学・畑等のチョイ乗りをする車両全般に言える事で、それらに多く使われるスクーターにはカーボンが蓄積されている可能性が高いと言えるでしょう。

インジェクション車なのに、吹け上がらずセンサー類を点検してみても問題無し。最終的に、辿り着いた原因が、このカーボンの蓄積という事もありました。
カーボンごときと思われるかもしれませんが、軽視していると徐々にカーボンが蓄積していき、フィーリング低下をもたらします。

カーボン除去の対策方法

燃料添加剤

ワコーズ フューエルワンNUTEC NC-220

カーボン除去に効果的な燃料添加剤を使用すると良いでしょう。

  1. WAKO’S フューエルワン
  2. YAMAHA PEAカーボンクリーナー
  3. NUTEC NC-220

上記の3つのいずれかのブランド製品を使用がお勧めです。

購入したら、規定量を燃料タンクに入れエンジンを始動・暖機後、ブリッピングや高回転で回し続けます。
吹け上がらない状態なら、エンジン始動してアイドリングで放置してみて下さい。
フューエルワンは、水抜き効果や燃料ラインの清掃もありますのでお勧めです。

キャブレタークリーナーをプラグホールから吹き込んで、カーボンを溶かす方法よりも燃料添加剤で回し続けて除去する方が作業性を考えると楽で効果的でしたので、燃料添加剤の使用をお勧めします。

エンジンオーバーホール

燃焼室 清掃

エンジンを分解して、カーボン除去をする方法です。
費用は掛かりますが、バルブの傘からピストンヘッドまで隅々までカーボンを除去する事が出来ます
エンジンオーバーホールを行うのであれば、ピストンやピストンリング、バルブの交換・すり合わせ等を行うのも良いでしょう。

まとめ

  • カーボンは以下の箇所に溜まる
    • マフラー入口
    • 吸気・排気バルブ
    • 吸気・排気ポート
    • ピストンヘッド
  • コストパフォーマンスに優れるカーボンの除去方法は、カーボン除去効果がある燃料添加剤がお勧め
    • WAKO’S フューエルワン
    • YAMAHA PEAカーボンクリーナー
    • NUTEC NC-220
  • 細部までカーボンを除去する場合は、エンジンオーバーホールがお勧め

小ネタ

エンジン内の汚れエンジン内の汚れ(ミッション)

走行距離50,000kmのクランクケース内の画像です。スラッジ等が原因で黄色に着色してます。長年・長い距離を走ったエンジンはこのようにエンジン内部は汚れていきます。
手軽に清掃するには、エンジンフラッシング剤を使用すると良いでしょう。
フラッシング剤をはあまり使用したくないと思われている方は、分子が細かいエンジンオイル(NUTEC製品)を使用すると多少汚れは取れると思います。
フラッシング剤ならワコーズのフラッシングオイルがお勧めです。既存のエンジンに添加して清掃するタイプ(エンジンフラッシュ:約1,000円)と、フラッシングオイルに入れ替えて清掃するタイプ(エンジンフラッシングオイル・ウォータードレーンプラス:約3,000円)とがあります。購入時は、バイクに使用できない製品もあるので要注意。

必ずカーボンは溜まる

理論空燃比という数値があり、燃料1:空気14.7の割合で燃焼させると水と二酸化炭素になります。
しかし、理論空燃比で常時燃やし続けるのは不可能です。始動時や加速時には必ず燃料が多くなり、内燃機関であれば必ずカーボンは蓄積されていきます。

なので、1年に1本で良いので燃料添加剤を入れてエンジン内をクリーンな状態に保つ事をお勧めします。
バイクは趣味の乗り物かと思います。ツーリングに行く過程で、バイクのフィーリングを味わうのもまた楽しみ方の1つかと思います。
今までカーボン除去をした事が無い方は、是非、一度行ってみて頂きたいです。結構感動すると思います。
フィーリングは、カーボンが少なくなる事でエンジンの吹け上がりが非常にスムーズに吹け上がるようになり、全回転域でトルクが向上(本来の状態に戻る)します。

 

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