バイクのリアブレーキキャリパー取り外し・取り付け方法
ブレーキパッドの交換やリアホイール脱着時にブレーキキャリパーを取り外し・取り付けを行います。
ブレーキは、『走る・曲がる・止まる』の中で一番重要な『止まる』の整備です。
トルク管理は勿論ですが取り付けに一工夫あるので確認して下さい。
今回はブレーキキャリパーの取り外し・取り付け方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 時間: 約10分(取り外し・取り付け:各5分)
- 費用: 無料
- ショップ工賃: 約1,000円(取り外し・取り付け含む)
- 難易度: ★☆☆☆☆
※フローティングキャリパーを例に行います
作業手順
1.ブレーキキャリパー取り外し
ブレーキキャリパーの固定ボルトを取り外しましょう。
固定ボルトは、赤枠のようにキャリパーブラケットとブレーキキャリパーを固定している2本のボルトが該当します。
2ピースの対抗ピストンキャリパー(両押しキャリパー)には他にもボルトが取り付けられているので、間違えて取り外さないよう注意しましょう。
上記画像に2本の白い六角穴付きボルトが該当します。
2ピースキャリパーは2つのピース(部品)からできています。
2つのピースを繋ぎ合わせているのが2本の白い六角穴付きボルトです。
このボルトを取り外してしまうとブレーキキャリパーが分割されブレーキフルードが出てくるので注意しましょう。
キャリパーピストンをホイール方向に少し押し戻しましょう。
これにより、摩耗したブレーキディスクでも容易にブレーキキャリパーを取り外せます。
ブレーキキャリパーを持ち上げて取り外しましょう。
ブレーキキャリパーがホイールに接触しそうなら傷が付かないようにウエスで覆った後、取り外しましょう。
フローティングキャリパーの場合は紛失防止のため、パッドリテーナーを取り外しましょう。
フローティングキャリパーの場合、シムも取り外しておきましょう。
シムのツメが緩んでいると外れてしまう場合があるので紛失防止のため取り外しましょう。
ブレーキホースに負荷が掛からないようブレーキキャリパーを結束バンドや紐で吊るしまょう。
パッドピンやボルト穴(画像の赤枠)から吊るすとよいでしょう。
サイレンサーブラケットが無い場合は、リアスタンドにウエスを敷いて置いておきましょう。
フローティングキャリパーの場合、キャリパーブラケットのブーツを潰して引っ張って取り外しましょう。
ブーツ内にはグリスが塗布されておりスライドピンが摺動しているので古いグリスを除去して新しいグリスを塗布します。
2.清掃
ブーツとキャリパーブラケット内部の古いグリスを綿棒とパーツクリーナーで清掃しましょう。
ブレーキキャリパーの固定ボルトにはネジロック剤が使われている場合があります。
ネジロック剤がねじ山に付着している事により設定したトルクに満たずボルトが緩む可能性があります。
ネジロック剤が使われている場合はボルトと雌ネジに必ずタップ・ダイスを掛けましょう。
使い方の詳細は、タップ・ダイスの使い方をご覧ください。
3.ブレーキキャリパー取り付け
フローティングキャリパーの場合、キャリパーブラケットとブーツ内部にシリコングリスを綿棒で適量塗布しましょう。
ブーツをキャリパーブラケットに取り付けましょう。
パッドリテーナーをキャリパーブラケットに取り付けましょう。
フローティングキャリパーのパッドリテーナーが固定出来ない場合は、パッドリテーナーのツメを内側に曲げましょう。
パッドリテーナーはツメでキャリパーブラケットを挟む事で固定されています。
内側に曲げる事でテンションを強めて外れにくくする事が出来ます。
尚、何度も折り曲げすると金属疲労で破損するので注意しましょう。
ブレーキキャリパーを吊るしていた結束バンドや紐を取り外しましょう。
通常の結束バンドは再使用出来ないのでニッパで切りましょう。
シムを取り外した場合は取り付けましょう。
ブレーキパッドを手で誘導しながらブレーキキャリパーを配置しましょう。
ブレーキキャリパーのスライドピンにシリコングリスを塗布しましょう。
2ピースキャリパーにはシリコングリスを塗布するスライドピンはありませんので全ネジのボルトを取り付けましょう。
ブレーキキャリパー固定ボルトを仮止めしましょう。
手で軽く締める程度です。
ブレーキペダルの感触が戻ってから、更に2,3回掛けた後にブレーキペダルを押しながら指定トルクで締め付けましょう。
初めはブレーキペダルに感触がありませんが2、3回と押すと感触が元に戻ります。
ブレーキを作動させる事でブレーキパッドとブレーキディスクの位置が修正されブレーキのフィーリング向上が期待できます。
ブレーキフルードがリザーブタンクのUPPERレベルまで注いであるか確認しましょう。
UPPERレベル未満の場合は補充しましょう。
詳しくは、ブレーキフルード補充方法をご覧下さい。
再度、ブレーキペダルを押し感触が固くなるか確認しましょう。
ブレーキペダルの感触が元に戻らない場合はエアが噛んでいるのでブレーキフルードのエア抜きを行いましょう。
詳しくは、リアブレーキフルード交換・エア抜き方法をご覧下さい。
まとめ
- ブレーキキャリパー取り外し時、ホイール方向に押しウエスで保護して取り外す。
- ブレーキキャリパー取り外し後、ブレーキキャリパーを吊るす。
- ブレーキキャリパー取り付け時、ブレーキペダルの感触が戻ってから、更に2,3回掛けた後にブレーキペダルを押しながら指定トルクで締め付ける。
- ブレーキキャリパー取り付け後、ブレーキペダルを踏んでブレーキが作動するか確認。
Q&A
- 走り出したら、ブレーキペダルの感触が無くて焦った。
- ブレーキキャリパーを取り外したら、ピストンがブレーキキャリパー側に戻されています。必ず作業終了後、ブレーキが作動するまでブレーキペダルを踏みましょう。
- ブレーキキャリパーを押し戻す理由は?
- ブレーキディスクをノギスで計測している動画がありましたが、その計測方法は間違っている事になるのか?
- 残念ながら、ブレーキディスクはノギスでは計測できません。通常マイクロメーターとよばれる工具を使用してブレーキディスクき刻印されている数値(MINと刻印されています)を参考に使用継続を判断します。
ブレーキディスク交換頻度の理想はブレーキパッド交換毎にブレーキディスクも交換が最適です。しかし、そこまで多頻度で交換するオーナーは稀なのでブレーキディスクの状態を見て交換となります。詳しくは、バイクのフロントブレーキディスク交換方法をご覧さい。
- 残念ながら、ブレーキディスクはノギスでは計測できません。通常マイクロメーターとよばれる工具を使用してブレーキディスクき刻印されている数値(MINと刻印されています)を参考に使用継続を判断します。
- スライドピンにはシリコングリスではなく、万能グリスを塗布してはダメでしょうか?
- ゴムに対応していれば問題はありません。
ブーツがゴム製なのでゴムと接触するグリスは基本シリコングリスを塗布しましょう。
- ゴムに対応していれば問題はありません。
- ブレーキペダルを踏みながら取り付けるとフィーリング向上と記載されていますが、具体的にどのようにフィーリングが向上するのでしょうか?
- 踏んだ際のレスポンスが僅かに向上する場合があります。
摩耗しているブレーキディスクにブレーキパッドを取り付けた際、ブレーキを制動させるとブレーキパッドは変形するようにしてブレーキディスクへ押し付けられます。
ブレーキディスクの外側・内側は摩耗せずに新品の厚さで残りますがその厚さまで滑らかに曲線を描くように上がります。その曲線を描いているブレーキディスクに対して、キャリパー固定ボルトとブラケット・キャリパーの僅かな遊びの中でブレーキパッドにとって最適な位置へ誘導してあげます。その誘導する作業がブレーキペダルを踏む作業です。
劇的な効果はありません。
- 踏んだ際のレスポンスが僅かに向上する場合があります。
ブレーキ簡単用語解説
- ブレーキパッド:ブレーキディスクと接触する事で熱エネルギーを発生させる代わりに速度を落とす。キャリパーに装着されている。
- パッドスプリング:ブレーキパッドにテンションを与えブレーキパッドの脱落防止の役割。
- パッドピン:ブレーキパッドを保持する役割。
- ピンプラグ:パッドピン脱落防止の栓
- シム:ブレーキの鳴き防止とブレーキフルードへの断熱の役割。
- ブレーキディスク:ブレーキパッドと接触する事で熱エネルギーを発生させる代わりに速度を落とす。ホイールに装着されている。
- ブレーキキャリパー:ブレーキパッドをブレーキディスクへ押さえつける役割。
- キャリパーピストン:ブレーキパッドを押す
- ダストシール:キャリパーピストンとキャリパーの間に配置され、雨水やほこりをキャリパー内に入り込ませない役割。
- オイルシール:キャリパーピストンとキャリパーの間に配置され、キャリパー内のブレーキフルードを留めておく役割。
- リザーバータンク:ブレーキフルードを一時的に保管する場所。ブレーキフルードが減少すると外から空気が補充して常に大気圧をちブレーキフィーリング低下を防ぐ。
- ブリーダー:ブレーキフルード交換時にブレーキフルードを排出する役割。
- ブレーキマスター:ブレーキフルードを圧送する役割。
- ブレーキレバー:ブレーキマスターのピストンを押し、ブレーキマスターを機能させる役割。
- テールランプ::後続車へ走っている事を知らせる車体後方のライト。
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