バイクのフロントフォーク取り外し・取り付け方法
フロントフォークのオイル交換やステムベアリング交換時などにフロントフォークの取り外し・取り付けを行う必要があります。
フロントフォークの取り外し前に突き出し量の確認とマーキングを行ってから取り外しましょう。
今回はフロントフォークの取り外し・取り付け方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 時間: 約40分
- 費用: 0円~約17,500円
- グリス(万能グリス):約500円
- フロントスタンド:約17,000円
- ショップ工賃: 約4,000円
- 難易度: ★★☆☆☆
作業手順
1.フロントフォーク取り外し
フロントフォークのインナーチューブがトップブリッジから突き出ている長さ(突き出し量)をノギスで計測しましょう。
突き出し量はメモしておきましょう。
ウエスにパーツクリーナーを吹き付けてインナーチューブとアンダーブラケットの油分を除去しましょう。
油性ペンを使用して、インナーチューブとアンダーブラケットに縦線のマーキングを入れましょう。
ブレーキキャリパーの固定ボルトを取り外し、ウエスで保護してブレーキキャリパーを取り外しましょう。
詳しくは、フロントブレーキキャリパー取り外し・取り付け方法をご覧ください。
アクスルシャフトを取り外し、フロントホイールを取り外しましょう。
フロントフォークの種類により取り外し方法が異なるので確認した後、フロントホイールを取り外しましょう。
詳しくは、フロントホイール取り外し・取り付け方法をご覧ください。
フロントフェンダーの固定ボルト・ナットを取り外してフロントフェンダーを取り外しましょう。
赤矢印のトップブリッジの割締めボルトを緩めていきます。
まず作業の支障となるパーツは取り外しましょう。
この場合、ブレーキリザーバータンクのステー固定ボルトを取り外して、割り締めボルトへアプローチ出来るようにします。
トップブリッジの固定ボルトを取り外しましょう。
本来緩めるのみで問題ありませんがタップ・ダイスを掛けて頂きたいので取り外しましょう。
ハンドルがフロントフォークに取り付けられている場合は、ハンドルの固定ボルトを緩めましょう。
固定ボルトを取り外しても問題ありませんが緩めるのみで問題ありません。
赤矢印の部分がアンダーブラケットの固定ボルトです。
フロントフォークは、トップブリッジとアンダーブラケットの2か所によって固定されています。
膝でフロントフォーク下部を支えながらアンダーブラケットの固定ボルトを取り外しましょう。
フロントフォークが外れて地面に落下するので、傷や亀裂が入らないよう膝で支えながら緩めましょう。
スナップリングがある場合は取り外しましょう。
フロントフォークには突き出し量を一定に保つ為に溝が設けられ、そこにスナップリングが取り付けられている場合があります。
フロントフォークは下に引き抜く事ができるので引き抜いて取り外しましょう。
ハンドルを取り外した場合はブレーキホース・スロットルケーブルへの負荷を掛けないよう結束バンド等使いトップブリッジを吊るしておきましょう。
カウルに接触するようならウエスで保護しましょう。
反対側のフロントフォークの取り外しを行う場合は同様に取り外しましょう。
2.清掃
アンダーブラケット・トップブリッジ・ハンドルのボルト穴・ボルトにタップ・ダイスを使用して清掃しましょう。
タップが掛けられない場合はパーツクリーナーで雌ネジを洗い流しましょう。
ねじ山に浸透潤滑剤を塗布してからタップ・ダイスを掛け、掛け終わったらパーツクリーナーで脱脂しましょう。
詳しくは、タップ・ダイスの使い方をご覧下さい。
セパレートハンドルの場合はフロントフォークが通る穴をパーツクリーナーとウエスで脱脂しましょう。
トップブリッジのフロントフォークが通る穴をパーツクリーナーとウエスで脱脂しましょう。
アンダーブラケットのフロントフォークが通る穴をパーツクリーナーとウエスで脱脂しましょう。
錆びがある場合は、紙やすり(800番程度)を使用して除去しましょう。
3.フロントフォーク取り付け
ウエスとパーツクリーナーでインナーチューブを脱脂しましょう。
インナーチューブに手汗(塩分)が付着すると、錆び発生の原因になります。
尚、マーキングは消さないよう注意しましょう。
吊るしたハンドルの結束バンドを切りましょう。
フロントフォークを挿入していきましょう。
まずアンダーブラケットにフロントフォークを通します。
スナップリングがある場合はフロントフォークに取り付けましょう。
ハンドルをフロントフォークに通します。
トップブリッジにフロントフォークを通します。
マーキングを合わせて、アンダーブラケット固定ボルトを締め付けましょう。
左右フロントフォークの突き出し量をノギスで確認しましょう。
スナップリングが無いフロントフォークは微調整しながら正確に設定しましょう。
もし突き出し量が分からない場合はサービスマニュアルで確認しましょう。
突き出し量が左右同じか確認するにはアクスルシャフトを通します。
突き出し量が左右同じならスムーズにアクスルシャフトが通ります。
通らない場合は再度突き出し量を調整しましょう。
アンダーブラケットを指定トルクで締め付けましょう。
カウルがある場合は傷防止の為にウエスで保護しましょう。
タップを掛けれなかった場合は締め付けに対して比例してトルクが上がっていかない場合があります。
この場合、そのまま締め付けるとネジが切れるので注意して下さい。
カウル等の作業の支障となるものを取り外してからタップを掛けて指定トルクで締め付けましょう。
トルクレンチは持ち手の中心線を垂直に力を掛けて締め付けましょう。
詳しくは、トルクレンチの使い方をご覧下さい。
トップブリッジの固定ボルトを指定トルクで締め付けましょう。
ハンドルの固定ボルトを指定トルクで締め付けましょう。
その他の取り外したパーツを取り付けましょう。
この場合ブレーキリザーバータンクを取り付けます。
フロントホイールを取り付けましょう。
ダストシール溝のグリスを除去した後に新品の万能グリスを塗布してからホイールカラーを取り付けてフロントホイールを取り付けましょう。
詳しくは、フロントホイール取り外し・取り付け方法をご覧ください。
ブレーキキャリパーを取り付けましょう。
ブレーキレバーを握った状態で固定ボルトを指定トルクで締め付けましょう。
詳しくは、フロントブレーキキャリパー取り外し・取り付け方法をご覧ください。
まとめ
- フロントフォーク取り外し前に、フロントフォークのインナーチューブの突出し量をノギスで確認。
- フロントフォーク取り外し前に、アンダーブラケットとインナーチューブにマーキングをする。
- フロントフォーク取り付け時、マーキング位置に配置して突出し量を左右合わせる。
Q&A
- ホイールが取り付けできないのですが何故でしょうか?
- フロントフォークが左右入れ替わっていると取り付けできない場合があります。また、突出し量は左右のフロントフォーク共に同一か確認しましょう。左右異なると、アクスルシャフトが挿入できず取り付けできないので突出し量の調整を行いましょう。
- フロントフォークにマーキングしているようですが目的は何でしょう?
- 脱着前後においてフィーリング低下を無くす為にマーキングを行います。
インナーチューブ下部・アウターチューブ上部には、スライドメタルと呼ばれるパーツが取り付けられています。
スライドメタルはフロントフォークがスムーズに摺動する為の消耗パーツですが、フロントフォーク取り外した後にインナーチューブが回転してしまうとスライドメタルとアウターチューブの接触する箇所が変化します。
位置が変化した状態で車体に取り付けて走行するとフロントフォークがボトム(上下)した時にコツンと何かに当たるようなフィーリングが発生する事が摩耗したスライドメタル・アウターチューブに稀に発生します。それを防ぐためにマーキングを行います。反対に症状が発生した段階では既に極度に摩耗した状態なので交換する必要があります。
※スライドメタルが取り付けられていないフロントフォークもあります。
- 脱着前後においてフィーリング低下を無くす為にマーキングを行います。
- ハンドルがフロントフォークに取り付けられていなければ取り外す必要はありませんか?
- 基本的にフロントフォークの交換や脱着のみなら必要は無いかと思います。
脱着の多くがオイル交換やオーバーホールかと思いますのでトップキャップを取り外し前に緩める必要があり、取り外す必要が出てくる場合があります。必要に応じて取り外して作業を行いましょう。
- 基本的にフロントフォークの交換や脱着のみなら必要は無いかと思います。
- フロントフォークのインナーチューブにシリコングリスを塗布して錆防止をしようと思うのですが、取り付けの際その部分も脱脂した方が良いでしょうか?
- 脱脂した方が良いです。フロントフォークはトップブリッジとアンダーブラケットの2か所で固定されているのでそこにグリスを介在させてしまうと滑りやすくなるので脱脂を行うのですが、保護目的で行うなら取り付け後に塗布すると良いでしょう。取り付け前に塗布してしまうとアンダーブラケットには必ずグリスが介在する事になってしまい滑りやすくなってしまい保持力が弱まってしまう可能性があります。加えて、シリコングリスはホコリが付きやすくなり、見た目が白っぽい感じになり人によっては印象が悪いと感じる事もあります。そこで、バリアスコートのようなワックス系で保護すると良いでしょう。
- フロントフォークのインナーチューブに錆があるのですがどうやって落とせば良いでしょう?
- 耐水ペーパーの800番を縦3cm横20cmに細長く切り取ってエンジンオイルを塗布します。フロントフォークを立てて垂直方向(横方向)に磨く事で錆は取れるでしょう。エンジンオイルは4サイクルエンジンオイル・2サイクルエンジンオイルどちらでも構いません。因みにインナーチューブのダストシール周辺の縦傷を除去する場合はエンジンオイルではなく、ワコーズのフォークオイルを使用するとエンジンオイルよりサラサラしているのでより研磨力が上がり磨き易くなります。
- オイルを塗布して締め付ければトルクの精度が上がると聞いたのですが、それはダメなのでしょうか?
- トルクの精度はあがるのは事実ですがサービスマニュアルに記載されていない場合は塗布してはいけません。サービスマニュアルにオイル塗布が記載されていないのにオイルを塗布すると指定の数値より大きなトルクで締め付ける事になります。サービスマニュアルに書かれている指定トルクの数値はその状態(この場合オイル塗布していない状態)での許容トルクの丁度中間の位置を示しているとHONDAのマニュアルに記載されています。中間位置を示す理由はトルクレンチの誤差やネジの状態にもよるからです。オイルを塗布する理由は1回(厳密には確か10回程度)で指定トルクの中間位置の締め付けに近づける事が出来るからです。なのでトルク精度が求められるエンジン内部のボルト・ナットには塗布するように指定があります。モリブデンオイルは更に10回ではなく確か5回程度に早めることが出来る事が出来ます。因みにその精度を1回で出す専用ケミカルも海外メーカーで出しています。
- パーツクリーナーで雌ネジを洗い流すだけでトルクの精度は上がるのでしょうか?
- 以前にダイスを掛けて比例してトルクが上がらなくなったのが雌ネジをパーツクリーナーで清掃したら比例してトルクは上がるようになった事があります。緩めて取り付けた事でねじ山の馴染みが向上した事も理由としてあると思いますが、やらないよりは汚れを落とす意味で効果はあると思います。
サスペンション簡単用語解説
- スナップリング(フロントフォーク):軸に溝をつけ、その溝にはめることで軸方向の動きを止めるばね輪のこと
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません