バイクのフロントホイール取り外し・取り付け方法
バイクのタイヤ交換やフロントフォークO/Hの整備を行う際にフロントホイールの脱着を行います。
フロントフォークの種類により取り外し・取り付けの方法が異なるので詳細は以下で確認して下さい。
また、スピードギアボックスがフロントホイールに取り付けられている車種は、フロントホイール取り付け後にフロントホイールを手で回してスピードメーターの動作確認を行いましょう。
今回は、フロントホイールの取り外し・取り付け方法について解説します。
是非、参考にして頂きたい。
整備情報
- 時間: 取り外し・取り付け:各15分
- 費用: 約33,500円
- ショップ工賃: 約2,000円(取り外し・取り付け含む)
- 難易度: ★★★☆☆
作業手順
1.フロントホイール取り外し
キャリパーを取り外しましょう。
キャリパーは2本のボルトでフロントフォークに取り付けられているので緩めて取り外し、キャリパーピストンを押し戻してからウエスで覆って取り外しましょう。
取り外したキャリパーは、ブレーキホース等に負荷が掛からないようにキャリパーから吊るしておきましょう。
詳しくは、フロントブレーキキャリパー取り外し・取り付け方法をご覧ください。
割締め式フロントフォークの場合、割締めボルトを緩めましょう。
上記画像ではタップ・ダイスを掛けるので取り外していますが、通常は緩めるのみで結構です。
ホルダ式フロントフォークの場合、ホルダナットを取り外しましょう。
フロントフォークは大きく3種類に分けられ、取り外し・取り付け時に各フロントフォークに注意点があります。
お持ちのフロントフォークの種類と照らし合わせて[ホイール取付時注意]フロントフォークの種類3タイプで確認しましょう。
画像赤枠のようにアクスルシャフトの端に穴が開いている場合、プラスドライバーを通してください。
六角頭の場合はメガネレンチが取り外しし易いです。
アクスルシャフト側をドライバー・メガネレンチで固定し、アクスルナット側をスピンナハンドやメガネレンチで緩めましょう。
現時点では緩めるのみです。
力を加えて取り外すのはアクスルナット側です。
また、ラチェットハンドルはギアが破損する可能性があるのでスピンナハンドルの使用をお勧めします。高トルク(フロントアクスルなら120N-m)に耐えれるラチェットハンドルなら問題ありません。通常のフロントフォーク(テレスコピック)であれば、約60~100N-mのトルクで締め付けられているはずです。
フロントスタンドを使用してフロントアップしましょう。
フロントスタンド先端のカラーは最適なサイズを取り付け、カウルに接触しないように誘導してステムに取り付けてフロントアップしましょう。
詳細は、メンテナンススタンドの使い方をご覧ください。
アクスルナット、もしくはアクスルボルトを取り外します。
事前に緩めてあるので容易に取り外し出来ます。
左手でフロントホイール上部を持ち上げてアクスルシャフトにテンションが掛からないようにしながら、右手でアクスルシャフトを抜きましょう。
アクスルシャフトを取り外すと、フロントホイールが外れます。
アクスルシャフトを引き抜く際、ドライバーを上記画像のように持つと引き抜き易いです。
フロントホイール両端にホイールカラーと呼ばれるパーツが2つ装着されています。
内部のベアリングを機能させるための重要なパーツです。
車種によってはホイールカラーが片側のみで、スピードギアが取り付けられている場合があります。
余談ですが、通常、スピードギアは車体に跨った状態から見て左側に取り付けられているので、タイヤ交換をする際にスピードメーターギアの位置を目安にフロントホイールの回転方向が分かるので組み間違えを防ぐことに役立ちます。
左右のホイールカラーを取り外しましょう。
初めのうちは、取り忘れて紛失しやすいので忘れずに取り外して保管しましょう。
ホイールカラーは、左右同じサイズの場合と、サイズが異なる場合がある為、フロントフォークの左側・右側にそれぞれのカラーを置いておくと装着の間違えを防ぐことが出来ます。
2.清掃
アクスルシャフト・ホイールカラー・ダストシール溝の清掃を行いましょう。
ホイールのダストシール溝の古いグリスをウエスで除去しましょう。
ダストシール溝にグリス塗布されている目的は異物が入るのを防ぐ事と雨水による錆び防止です。
古いグリスをウエスで拭き取れない場合は、ブレーキキャリパーシール溝の清掃に使用する専用工具で優しく除去すると綺麗に除去できます。
先端が尖っているのでダストシールに傷を入れないよう注意して使用しましょう。
ウエスとパーツクリーナーを使いアクスルシャフトを清掃しましょう。
指の腹でアクスルシャフトを滑らし、段やひび割れ、剥離がないか確認します。
長年放置した車両にはアクスルシャフトにはグリスが切れて湿気によって錆が発生している場合があります。
上記画像のアルミのアクスルシャフトでもアルミ錆が発生していました。
六角頭が取り付けられている場合は、シャフトと六角頭の繋ぎ目も確認しましょう。
錆・クラック(ひび割れ)が発生している場合は交換必須です。
アクスルシャフトは、ホイールを支える重要なパーツなので古い車両は特に注意して確認しましょう。
ホイールカラーもウエスとパーツクリーナーで清掃しましょう。
ホイールカラー内周、外周・ベアリングとの接触面をに段付きやひび割れがある場合は交換しましょう。
ホイールのダストシールによってホイールカラー外周に段付き摩耗が発生し易くなります。
ダストシールは硬く、常にホイールカラーと接触し高速回転しているのでカラーに摩耗が発生してしまいます。
ボルトの頭は、経年と共に汚れが付着して見栄えが悪くなります。
ステンレス製ボルトには、固形コンパウンドと電動ドリルとカップブラシで手軽に綺麗になります。
詳しくは、[ルックス向上]ボルト頭の清掃方法をご覧ください。
※必須作業ではありません。実践したい方は行ってみてください。
ボルト類にタップ・ダイスを掛けましょう。
ボルトに汚れが付着していると、締め付けトルクが変化してしまい正確なトルク管理ができません。
特に足回り系は雨水や汚れが付着し易い箇所なので分解毎に清掃しましょう。
タップ・ダイスのサイズが無い場合は、固めの歯ブラシとパーツクリーナーで汚れを除去しましょう。
詳しくは、タップ・ダイスの使い方をご覧ください。
5.フロントホイール取り付け
ダストシール溝に万能グリスを塗布しましょう。
塗布量の目安として、ダストシールの溝と縁が水平になる程度です。
はじめに溝に塗り込んだ後、塗り込んだグリスの上に更にグリスを置いてくるイメージで塗布すると綺麗に塗布出来ます。
グリスを塗布する目的は、水の侵入とダストを防ぐ事です。
ダストシールの溝の縁両端が尖っていますが、ゴムであるダストシールが金属のホイールカラーと接触して走行する事で段付きを発生させてしまいます。
要するに、ゴムが金属を削ってしまうのです。
なので、定期的(目安:2年毎)にダストシールにもグリスを塗布する事でホイールカラーとダストシールのライフを延ばす事が期待できます。
ホイールカラーをフロントホイールに取り付けていきます。
ホイールカラーとホイールベアリング間(接触面)にグリスが付着した場合、ウエスで拭き取っておきましょう。
ホイールカラーに万能グリスを薄く塗布してホイール左右に取り付けましょう。
塗布する箇所は、ダストシールと接触する箇所のみで構いません。
はみ出たグリスは綿棒を使用して拭き取ると良いでしょう。
車種によってホイールカラーは1つのものや、スピードメーターを計測するギアボックスが取り付けられそれがホイールカラーの役割をしている場合もあります。
尚、ホイールカラーは大きさが左右異なる場合があるので確認して取り付けましょう。
フロントアクスルシャフトに万能グリスを薄く塗布しましょう。
多く塗布すると車体に取り付けた時にはみ出てしまいます。
グリス塗布の目的は、湿気や雨水が入った時に錆を発生させない防錆目的です。
片手でアクスルシャフトを持ちます。
アクスルシャフト端に穴があけられている場合は、プラスドライバーを挿しましょう。
ドライバーの軸の太さによって通らないドライバーもあるので、その際は軸が細いドライバーを使用すると良いでしょう。
参考車両に使用したドライバーは、ANEX(アネックス)のビスブレーカードライバーです。
左手でホイール上部を持ち、左足をタイヤ下に潜り込ませます。
左足つま先で高さ調整をして、アクスルシャフトを挿入します。
アクスルシャフトが途中まで入った後、挿入しずらい場合、アクスルシャフトがフロントフォークに接触している状況なので、フロントフォークのアクスルシャフト穴を除き、位置を修正した後、プラスチックハンマーで軽く叩くとスムーズに挿入できます。
このやり方が一番簡単に取り付けできるので非常におすすめです。
尚、アクスルシャフトは右から挿入する車種もあれば左から挿入する車種もあるので間違えないよう注意して下さい。
アクスルボルトもしくはアクスルナットを指定トルクで締め付けます。
アクスルナットのみを締め付けると、空回りするのでアクスルシャフトを保持しながら締め付けてください。
六角頭の場合は、メガネレンチを使用すると保持し易いです。
尚、トルクレンチで締め付けるのはナット側です。シャフト側ではありませんので注意して下さい。
トルクレンチは、持ち手の基準線を中心に持ち垂直に力を加えてください。
詳しくは、トルクレンチの使い方をご覧ください。
割締め式の場合、全てのボルトを挿入して仮止めしましょう。
ホルダ式の場合も同様に仮止めしましょう。
割締め式の場合、2、3回に分け指定トルクで締め付けます。
指定トルクで締め付け後、再度指定トルクで締め付けましょう。最終的に、5回程締め付けないと完全に締め付けた状態にならないはずです。
再度指定トルクで締め付ける目的は、先に締め付けたボルトが指定トルクに達していない可能性がある為です。
割締めが使われている箇所(フロントフォーク・トップブリッジ・アンダーブラケット等)は、全て何度もトルク管理を行い締め付けられているか確認しましょう。
また、フロントフォークがホルダ式の場合は上下があれば上を先に、前後があれば前を先に一気に指定トルクで締め付け、下・後側は後で指定トルクで締め付けます。
カウルにフロントスタンドが当たり傷が入らないよう、フロントスタンドのアタッチメント付近を手で覆い保護しながら取り外しましょう。
詳しくは、メンテナンススタンドの使い方をご覧ください。
キャリパーをウエスで覆い車体に取り付けて、ブレーキレバーを握りながら指定トルクで締め付けましょう。
キャリパーの取り付けボルトは、外れてはならない重要なボルトなので、必ずトルクレンチを使用して下さい。感覚で締め付けてはいけないボルトです。
ブレーキレバーを握るとボルトの遊びの範囲で馴染みが良い位置に移動します。
これにより、ブレーキのタッチフィーリングの向上が期待出来ます。
詳しくは、フロントブレーキキャリパー取り外し・取り付け方法をご覧ください。
ブレーキレバーを握り感触があるか再度確認しましょう。
キャリパーピストンがキャリパー側に戻っていると、初めはスカスカと感覚がない状態なので何度かブレーキレバーを握るとピストンが出て感触が元に戻ります。
スピードメーターギアボックスがフロントホイールに取り付けられている場合は、フロントホイールを浮けて手で回しスピードメーターの針が正常に振れるか確認しましょう。
まとめ
- フロントホイール取り外し後、ホイールカラーは左右分けて間違えないよう保管する。
- フロントホイール取り外し後、ダストシール溝を清掃・グリスアップを行う。
- フロントホイール取り付け時、トルクレンチを使いアクスルナット側を指定トルクで締め付ける。
- フロントホイール取り付け時、割締め式の場合は2、3回に分け指定トルクで締め付けた後、再度指定トルクで締め付ける。
- フロントホイール取り付け時、ホルダ式の場合、上下があれば上を先に、前後があれば前を先に一気に指定トルクで締め付ける。次に下・後ろ側を指定トルクで締め付ける。
Q&A
- アクスルシャフトが緩まない
- 割締めボルトが止まっている状態で緩めようとすると緩みません。割締めボルトを緩めたら確認しましょう。
- ビューエル等の海外メーカーのバイクには逆ネジの車両もあるので、サービスマニュアルで確認してください。逆ネジの場合、時計回りで緩みます。国産バイクは基本、反時計回りです。
- ホイールカラーを紛失した
- ホイールを取り外した際、ホイールカラーを外し忘れて次回取り付ける際に無い場合があるのでホイールを外したらまずホイールカラーを外しましょう。
- 無くした場合、パーツリストから純正部品番号を控えて注文しましょう。パーツリストの購入・使い方は[日本語版]バイクサービスマニュアル・パーツリストの購入方法をご覧ください。
- ホイールカラーが左右どちらに取り付けられていたか分からない
- 簡易的に判断するには、ホイールカラーをよく見るとダストシールによってつけられた跡が付いていると思います。ホイールカラーの出量が左右異なる場合があるのでホイールに取り付けてみて跡がぴったり合うかを見る事で左右どちらに取り付けられていたか判断できるでしょう。また、左右でサイズが異なる場合があるので、仮付けしてみるとフィット感で分かる場合があります。また、実際に仮付けして、ホイールをフロントフォークに取り付けて、キャリパーを取り付けるとブレーキディスクの位置や、タイヤの位置から判断できるはずです。もし、分からない場合は、パーツリストやサービスマニュアルで確認すると良いでしょう。
- アクスルシャフトをドライバーで保持して壊れないのでしょうか?
- ドライバーに大きな力を加えるわけでは無いので壊れることはありませんので安心して作業して下さい。あくまで、回すのはアクスルナット側です。
- チェーンブロックを使いたいのですが、注意点はありますか?
- チェーンブロックを使う場合、配線やワイヤー類(クラッチワイヤー・スロットルワイヤー等)に干渉しないように注意して下さい。特に配線を挟む形で上げてしまうと配線が断線する可能性があります。
また、チェーンブロックを上下するチェーンが長いので車体に接触して傷が入らないように注意して使用して下さい。特にタンクは傷が目立つので注意しましょう。
- チェーンブロックを使う場合、配線やワイヤー類(クラッチワイヤー・スロットルワイヤー等)に干渉しないように注意して下さい。特に配線を挟む形で上げてしまうと配線が断線する可能性があります。
- ホイールカラーに溝ができている
- ダストシールによってホイールカラーが削れて溝が発生します。溝が発生している場合、それが純正で溝を作る仕様になっていない限り摩耗で削れている事になるのでホイールカラーを交換しましょう。
ダストシール溝にはグリスを2年(車検)毎に清掃・塗布してあげると良いでしょう。
車検整備ではホイールを外す作業(タイヤ交換・フロントフォークO/H等)をしないとグリス塗布する機会はないので定期的に確認しましょう。
- ダストシールによってホイールカラーが削れて溝が発生します。溝が発生している場合、それが純正で溝を作る仕様になっていない限り摩耗で削れている事になるのでホイールカラーを交換しましょう。
- フロントホイールのナットが外れないです
- 割り締めボルトが緩んでいれば、アクスルナットを強く反時計回りに回すと外れます。
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