クラッチ
目次
クラッチの役割とは?
クラッチとは、エンジンの動力をタイヤに伝える動力伝達装置の1つで、エンジンから出力される動力を一番最初に受け取るのがクラッチなのです。
そして、クラッチの役割は、エンジンからの動力をタイヤ(正確にはミッション)に伝わらないないように切り離すことです。
マニュアル車の場合は、速度に応じてシフトチェンジを行う必要がありますが、走行中はミッションの中にある各ギヤは常に回転し、エンジンからの動力を受け続けています。
したがって、そのままでは、シフトを切り替えたくともエンジンからの動力でギヤ同士が押さえつけられているためギヤが切り替わることができません。
そこで、クラッチを切り離すことによってエンジンからの動力を一旦断つことで、ギヤにかかっていた押さえつける力が抜け、スムーズにギヤが切り替わることができるようになります。
クラッチの大切な役割【半クラッチ】
信号待ちなどのアイドリング中は、ミッションのポジションは動力が伝わらないニュートラルに入っていますが、発進するために1速に入れなくてはなりません。
しかし、バイクは停止している状態であるため、回転しているエンジンの力をいきなりタイヤに伝えてしまうと、ほとんどの場合「ガクッ」とエンストしてしまうでしょう。
エンストせずスムーズに発進するためには、エンジンの動力を徐々に伝える「半クラッチ操作」必要があり、クラッチにはその伝わり具合を調節するという役割もあります。
クラッチの構成部品
下記の説明のようにクラッチには種類があり、メーカーやクラッチの種類により細かく言えば部品の名称などは違いますが、まずは、クラッチの構成する基本的部品を解説していきましょう。
フリクションディスク
別名クラッチディスクと呼ばれることもあり、下記クラッチプレートに圧着させられることによる摩擦力で、動力を伝える役割があります。
使用しているうちに摩耗していき、メンテナンスや乗り方、またはバイクの大きさにもよりますが、大体4~5万kmで交換時期を迎えることが多いようです。
クラッチプレート
フリクションディスクと対を成す部品で、別名プレッシャープレートとも呼ばれます。
多板式クラッチでクラッチディスクと交互に取り付けられ、クラッチディスクと同様に動力を伝えます。
クラッチディスクと違い、あまりに摩耗することはありませんが、経年劣化や熱の影響で焼けてしまったり、変形してしまうことがあり、滑りやジャダーの原因になります。
ダイヤフラムスプリング
クラッチディスクとプレッシャープレートをスプリングの力により圧着させ動力を伝えています。
メーカーや車種によりダイヤフラムとコイルスプリングのタイプがあります。
クラッチの構造
クラッチの構造を理解する上で、まずは動力の伝わり方を理解する必要があります。
一般的な湿式多板クラッチでの動力の伝わる順番は、エンジン(クランクシャフト) → フリクションディスク(画像2枚目の9番) → クラッチプレート(画像2枚目の10番) → ミッション(インプットシャフト)と伝わっていきます。
そして、上記のフリクションディスクとクラッチプレートはスプリングの力で圧着されていますので、スプリングの力を開放するために操作するのが「クラッチレバー」です。
クラッチレバーを握ることで、その力がワイヤーもしくはクラッチフルードを介して、プッシュロッドを押し、フリクションディスクとクラッチプレートの間に隙間を空けます。
するとエンジンからの動力が断たれ、ミッション側がフリーになになるため、停止中のシフト操作や走行中の変速がスムーズに行えます。
クラッチの種類いろいろ
一口にクラッチと言ってもその種類は様々で、バイクの用途や排気量など、そのバイクに合ったクラッチが採用されています。
ここからはバイクに採用されているクラッチの種類についてご紹介していきます。
湿式クラッチ
マニュアルのバイクで最もポピュラーなクラッチで、市販車のほとんどがこの湿式タイプのクラッチを採用しています。
名前の湿式(しっしき)とは、その名の通り「湿っている」という意味で、エンジンオイルやミッションオイルに浸っています。
湿式クラッチのメリット
- オイルに使っているため、クラッチの摩擦力の立ち上がりが緩やかになり、半クラッチなどの操作がしやすい
- オイルが循環することで削りカスなども洗い流されるため、クラッチ本体のメンテナンスが楽
- オイルによる冷却効果が期待できるため、熱による損傷を受けにくい
- クラッチケース内に密閉され、且つオイルに使っているため静粛性に優れる
などがあり、普段公道で使用する上では、特に目立ったデメリットはほとんどありません。
乾式クラッチ
古い車種ですが、NSR250R-SPやドゥカティといったレーサータイプなど、一部の走りを求める車種に採用されています。
湿式とは違い、ミッションやエンジンとクラッチユニットは完全に隔離され、その名の通り「乾いて」いており、クラッチを切っている時には、特有の「シャリシャリ」という摩擦音が聞こえるという特徴があります。
乾式クラッチのメリット
- 乾いているため摩擦力が高く、切れも良いため、よりダイレクト感のある操作性を得られる。
- オイルの抵抗を受けないためパワーロスを最小限にできる。
- 交換する際には、オイルが抜ける心配が無く、整備性に優れている。
- 空気にさらされているため、走行時の冷却性能に優れる。
といったところ、一見するとすごく良さそうに思うかもしれませんが、その分日常で使用するとなると、下記のようなデメリットもあります。
乾式クラッチのデメリット
- 摩擦力が高いため半クラッチなどの操作がシビアになり、半クラッチを多用しすぎるとクラッチが焼けやすい。
- 冷却のため、ケースには穴が開けられており、雨水や泥が侵入しやすく錆びやすい
- クラッチの削りカスが内部に残りやすいため、定期的に分解し、メンテナンスをする必要がある。
以上のようなデメリットもあるため、市販車で乾式クラッチを採用しているのは、ごく一部の車種に限られているのです。
単板式乾式クラッチ
BMWなど数少ない縦置きエンジンの車種に採用されているのが、単板単式クラッチで、構造やパーツ構成は車の単板クラッチとほぼ同じです。
単板式乾式クラッチは乾式でありながら操作性も良く、構造がシンプルなため軽量化できるというメリットがありますが、現在市販されているバイクではほとんど採用されていません。
その理由は、バイクのエンジンで多い横置きのレイアウトでは、車に比べてクラッチのスペースが狭く、クラッチの外径を大きくできないのです。
そのため、クラッチ1枚外径が小さく面積が稼げなくとも、多板式にすることで動力伝達に必要な摩擦面の面積を稼いでいます。。
遠心クラッチ
スクーターなどに用いられている方式のクラッチで、代表的な車種ではホンダカブなどが有名です。
特徴は何と言ってもクラッチレバーを必要としないということ。
クラッチをON・OFFする仕組みは、エンジンの回転で発生する遠心力によって押し付けられクラッチがON、回転が落ちるとウエイトの自重で元の位置の戻りクラッチがOFFになります。
スクーターとカブなどのマニュアル車では実際の構造に違いはありますが、比較的小排気量のバイクに採用されることが多いクラッチです。
マニュアル車では欠かせないクラッチのメンテナンス
車でもバイクでも運転が上手い人というのは、スムーズな加速やコーナーリングができますが、その肝になっているのが、クラッチの操作がどれだけ上手いかにかかっています。
ところが、どんなにベテランのライダーでも、クラッチの調整やメンテナンスができていなければ、ギクシャクした走りになってしいますし、どんなに練習しもどうにもなりません。
クラッチレバーが引っかかった感じがする場合や、半クラッチで振動(ジャダー)するなど、何かおかしいなと思ったら、是非プロに相談しましょう。
また、クラッチレバーの遊び調整をするだけでも操作性や、ライディングの気持ち良さに大きく影響します。
調整方法は、下記ページでもご紹介していますので、是非自分でも調整に挑戦してみましょう。
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